【不動産投資に必要な基本の投資戦略】
・不動産投資のインカムゲイン:家賃収入
・不動産投資のキャピタルゲイン:売却益
・インカムゲイン、キャピタルゲイン両方を狙える物件選びが重要
投資においては、インカムゲインとキャピタルゲインという2つの利益の形が存在します。どちらを狙うかは投資家の目的や市況、選択する投資手段によって異なり、それぞれに適した戦略や投資商品選びが重要です。
本記事では、不動産投資におけるインカムゲインとキャピタルゲインの違いやメリット、それぞれに適した投資スタイルに加え、現在の市況を加味した物件の選び方について分かりやすく解説します。
将来的な資産形成や安定収入を見据えた不動産投資を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
インカムゲインとは
インカムゲインとは保有資産から得られる継続的な利益のことで、「運用益」とも呼ばれます。
不動産では「家賃収入」が該当するほか、株式であれば配当金、債券であれば利子がインカムゲインとなります。
不動産投資においては、自身が保有する家賃10万円のワンルームマンションに入居者(借り手)が実際に住んでいる場合、毎月得られる10万円の家賃収入がインカムゲインにあたります。
インカムゲインのメリット
インカムゲインの大きな特徴は、安定して中長期的に利益を得られる点にあります。
不動産投資では入居者(借り手)が継続的に家賃を支払い続けてくれる限り、毎月一定額の収入を見込めます。そのため、長期的な資産形成や老後の備えに有効とされる利益です。
キャピタルゲインとは
キャピタルゲインとは、資産を売却することによって得られる利益のことを指します。いわゆる「売却益」にあたり、不動産などを購入時よりも高い価格で売却した場合はその差額の利益がキャピタルゲインとなります。
例えば3,000万円で購入した物件を4,000万円で売却すれば、差額の1,000万円がキャピタルゲインになります。
キャピタルゲインのメリット
キャピタルゲインの最大の魅力は、一度の取引で大きな利益を得られる可能性があることです。
エリアの再開発や需要の高まりなど、外的要因によって資産価値が上がるケースも多いため、キャピタルゲインを狙うのであれば購入時点での先見性や情報収集力が重要になります。市場環境を見極めて適切なタイミングで売却できれば、短期間で大きな収益を狙うことも可能です。
インカムゲインとキャピタルゲイン、どちらを狙うべきか
不動産投資においては、インカムゲインとキャピタルゲインどちらを狙うかは投資の目的によって異なります。
また、状況に応じて「どちらも」狙う戦略も考えられるため、昨今の情勢を踏まえたうえで自分に合った投資戦略を選ぶことが大切です。
インカムゲイン狙いの投資
安定した家賃収入が見込める物件であれば、ローンを活用した場合でも、その家賃収入を毎月の返済原資に充てることができるため、自己資金をあまり使わずに資産形成を進めることが可能です。また、返済が進むことで残債も徐々に減少していき、将来的には無借金の不動産として手元に残ることから、貯蓄や年金対策の手段として選ばれるケースも多くあります。
そのため、長らくマイナス金利が続いていた近年の日本では長期保有を前提としたインカムゲイン狙いの不動産投資が主流となっていました。
キャピタルゲイン狙いの投資
再投資資金を確保したい、また短期~中期で利益を確定させたいと考える投資家にはキャピタルゲイン狙いの投資が最適です。
かつてのバブル期のように短期間で地価が急騰する状況は現在では見られませんが、この15年ほどは不動産価格の上昇傾向が続いています。

国土交通省発表 <不動産価格指数(住宅)(令和6年11月分・季節調整値)> ※2010年平均=100
上図を見ていただくと分かる通り、区分マンションにおいては特に不動産価格の上昇傾向が顕著です。
価格上昇の要因はさまざまですが、近年では都心における再開発計画の進行や外国人投資家からの需要、加えてこれからご説明するインフレ・金利上昇などが大きな影響を与えていると考えられます。今後もこうした傾向が続けば、キャピタルゲインを狙う不動産投資がより注目を集めるようになっていくかもしれません。
インフレの種類と金利上昇の影響
インフレには主に2つのタイプがあります。一つは「コストプッシュインフレ」と呼ばれるもので、原材料費や人件費の上昇により物価全体が押し上げられる現象。もう一つは「デマンドプルインフレ」と言われ、旺盛な消費や投資によって需要が供給を上回ることで価格が上昇する現象です。
現在のインフレ局面はこの両者が複合的に進行している状態です。不動産業界では「コストプッシュインフレ」の影響で建築コストや人件費の上昇が起こっていることに加え、「デマンドプルインフレ」の影響で国内外からの住宅需要が拡大傾向にあります。
資産価値の目減りを防ぎつつ、中長期的な収益を見込める不動産投資は、こうしたインフレ下においても十分に効果を発揮します。経済全体の状況が変わりつつある今、インカムゲインとキャピタルゲインの捉え方も変化しています。
インカム・キャピタル両方の視点を持つ
デフレ下においてはインカムゲインによって中長期的に安定した収益を得ることができ、インフレ下にはキャピタルゲインによる資産価値の上昇も同時に狙えるのが不動産投資の大きな特徴です。
現在はインフレの影響で既に保有している物件の価値が見直されて資産価格が上昇し、キャピタルゲインの機会が生まれる可能性も出てきました。
これから新規に不動産投資を行う場合、両方のバランスを見極める物件選びがより重要になっていくでしょう。
不動産投資に適した物件は?
キャピタルゲイン狙いの不動産投資が視野に入る状況になってきたとはいえ、他の投資商品とは異なり取引後にすぐ換金できない点には変わりありません。
前章でご紹介した通り、今後の不動産投資で成功するにはインカムゲイン・キャピタルゲイン両方を狙える物件を探す視点を持つことが大切です。ここでは現在の市況を加味してどのような物件が投資に適しているかを解説します。
売り場を狙い長期保持できる物件がおすすめ
今後の地価上昇が期待されるエリアであれば、将来的なキャピタルゲインを狙うことができます。そのため、地価の上昇に備えて長期保有できる物件がおすすめです。
具体的には、相場より高い家賃で安定的に貸し出せている物件(=インカムゲイン狙いに向いている物件)は、売却用の物件(=キャピタルゲイン狙いに向いている物件)としても高く評価されやすくなります。
マンションの資産価値
不動産経済研究所が発表している下図のデータを参照すると分かるように、1973年以降、新築マンション価格は長期的に見ればおおよそ右肩上がりの傾向を続けています。

不動産経済研究所発表 新築マンション平均価格の年次別推移表(全国・首都圏・近畿圏)1973年(昭和48年)~2022年(令和4年)
上記のグラフを見ていただくと分かるように、過去にはマンションブームと呼ばれる局面も何度もあり、その度にマンション価格は上下を繰り返してきました。ここで注目すべきなのは、上昇後の反動で下がった時、前回の下降時よりも価格が高いことが多い(長期的には上昇を維持している)点です。
また、新築マンションの価格相場が上昇すると、それに対応する形で中古マンションの価格相場も上昇する傾向があります。
安定した需要は物件の価格維持にも寄与しており、新築マンションとして購入した物件は中古市場でも比較的高値で取引されやすい傾向にあります。入居実績やエリアの利便性などの要素が揃えば、売却時に高い資産評価を得ることも可能です。
つまり、保有中に安定した賃貸需要(=インカムゲイン)を得つつ、中古市場での高い資産評価(=キャピタルゲイン)の可能性も見込めるという“両輪の戦略”を取りやすい資産といえるでしょう。
まとめ
不動産投資では、「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」という2つの利益構造を理解したうえで、目的に合った投資スタイルを選ぶことが重要です。特に、安定収入を得たい場合はインカムゲイン、資産拡大を加速させたい場合はキャピタルゲインに重点を置くとよいでしょう。
マイナス金利政策が進んでいた数年前まではインカムゲイン狙いの不動産投資が主流でしたが、現在のようなインフレや金利上昇の局面では状況が変化しつつあります。インカムゲイン狙いの戦略を軸にしつつ、将来的な価格上昇とキャピタルゲインを視野に入れた物件選びが重要になってくるでしょう。
例えば賃貸需要が高く資産価値の下がりにくい区分マンションのような物件は、インカムゲインとキャピタルゲインの両方を狙える選択肢として魅力的です。
中長期で安定した資産運用を目指すなら、時代に応じた投資判断と、物件の特性を見極める視点を持つことが成功への第一歩となります。