不動産投資を始めるときは、初期費用はどのくらい必要?手持ちの資金で足りるだろうか?と心配になりますよね。
不動産を購入する際には初期費用として物件購入価格、もしくは(ローンで購入する場合)頭金が必要になることはよく知られています。しかし、実際はそれとは別にさまざまな諸費用もかかります。今回は、初期費用の内容と物件価格・頭金以外に必要な諸費用の目安などを解説します。
諸費用の詳細と概算を把握して、投資を始めるときの目安にしましょう。
1.初期費用の内容は?
初期費用は、現金購入の場合は物件価格全部、ローンを購入する場合は売買代金の一部に充てる「頭金」と売買代金以外にかかる「諸費用」に大きく分けられます。
不動産投資の初期費用は頭金の有無・額の大きさにより大きく変動します。投資を検討される場合は初期費用をシミュレーションし、実際の額を把握しましょう。
頭金支払額の目安
初期費用のうち物件の取得・ローンに必要な頭金は物件価格のおよそ10~20%が目安とされています。3,500万円のワンルームマンションを購入する場合、350万円~700万円程度必要だと考えられます。
ただし、用意すべき頭金は物件の種別、投資家の目的や資力、金融機関の評価などによって大きく変わります。融資を検討する段階で金融機関に詳しい金額を確認しましょう。
2.初期費用に含まれる「諸費用」とは?
諸費用は、不動産購入時に物件価格とは別にかかる費用をまとめたものを指します。
諸費用の相場は現金購入かローン購入か、新築か中古か、一棟か区分かなど諸条件によって異なります。例えば、新築マンションの場合、諸費用は物件金額のおおよそ2~5%が相場です。
中古マンションは仲介手数料などがかかるため、一般的に新築マンションよりも諸費用は高くなります。
3,500万円の新築マンションを購入した場合、諸費用の相場は70~180万円程度となります。
3.初期費用に含まれる「諸費用」の内訳
諸費用の内訳を詳しくみていきましょう。
今回は東京23区内にある25平米の新築マンション(物件価格3,500万円)を購入すると想定して相場の目安をご紹介します。
①金融機関事務手数料
事務手数料は金融機関によって異なり、金融機関やローン商品により幅が大きいことが特徴です。融資金額で手数料の額が決まる「定率型」と融資金額とは無関係に手数料を設定する「定額型」に大きく分かれます。
「事務手数料は安い方がいい」と考えがちですが、事務手数料を多く払うと金利が下がるなど、両者に相関性を持たせている金融機関が少なくありません。「事務手数料の負担が軽い金融機関を選んだほうが得になる」とは一概には言えないので注意しましょう。
また保証会社を利用する銀行などで融資を受ける場合、別途「保証料」が必要になることもあります。支払方法は大きく分けてローン借入時に一括払い、もしくは毎月の返済に金利を上乗せの2パターンがあり、融資先によってはどちらか選択できる場合もあります。
支払額の目安
- 定率型:融資金額の1~3%程度
- 定額型:融資金額にかかわらず15~45万円程度
②表題登記料
表題登記料は、不動産登記事項証明書の表題部を作成・変更する際に新規書類の取得などにかかる手数料や土地家屋調査士などへの報酬として必要な費用です。
新築などで不動産が「未登記」の場合や、売買時に計測した土地面積が登記内容と違ったとき、増築や改築をした場合などに発生します。
支払額の目安
表題登記料の目安はおおよそ3~5万円程度です。
③登記費用(登録免許税)と司法書士報酬
不動産の取得には不動産の移転(保存)登記が伴うので「登記費用」がかかります。登録免許税は、物件の所有権の移転登記やローンで購入する場合の抵当権の設定登記の際に支払います。必要な登記作業によって支払額が異なるため注意しましょう。
また、作業を依頼する司法書士への報酬も登記費用に含まれるのが一般的です。
支払額の目安
不動産購入時に必要となる登記作業と、それに係る税率は以下の通りです。
2025年現在は登録免許税に軽減措置が適用されているため、通常の税率が適用されない点には注意しましょう。
- 土地を購入する際の登記(所有権移転登記):固定資産税評価額×2%
※2026年3月31日までの登記は1.5%
- 新築の建物を購入する際の登記(所有権保存登記):固定資産税評価額×0.4%
※2027年3月31日までの登記は0.15%
- 中古の建物を購入する際の登記(所有権移転登記):固定資産税評価額×2%
※2027年3月31日までの登記は0.3%
- 不動産投資ローンを利用する際の登記(抵当権設定登記):0.4%
※2027年3月31日までの登記は0.1%
司法書士への報酬を加味すると、現金購入(所有権登記のみ)で6万円前後、ローン購入(+抵当権設定登記)で10万円前後が相場です。
④火災保険料 (火災保険や地震保険)
不動産投資の初期費用としては、火災保険料も必要です。現金購入の場合、加入は任意ですが、ローンを借りる際はほとんどのケースで加入が義務づけられます。
火災時の損害は数百万円以上の場合がありますので、任意だったとしても火災保険へは必ず加入しておきたいところです。
火災保険は最長5年、地震保険は最長5年加入でき、それ以降は自動更新できます。
支払額の目安
火災保険は5年で1~2万円、地震保険は5年で3~4万円程度です。
⑤(新築の場合)管理基金・修繕積立基金
新築マンションの場合は、契約時の初期費用として管理・修繕に必要な費用として「管理基金」「修繕積立基金」の支払いが発生します。引き渡し時にまとまった額を支払うので、事前に確認して準備しましょう。
中古マンションの場合、初期費用としてこれらの費用を支払う必要はありませんが、修繕時にまとめて費用を負担することになる点は変わりません。修繕時までにきちんと計画を立てて積み立てられているかがポイントです。
管理基金:管理に必要な物品を購入したり、管理人を募集したりする目的で利用される費用の基金
修繕積立基金:10~15年ごとに行う大規模修繕に備えて積み立てる費用の基金
そのほか、毎月口座引き落としなどで支払う管理費・修繕積立金を初月から3ヶ月分程度の管理費・修繕積立金をまとめて請求される場合があります。
支払額の目安
管理基金:管理費の2~3か月分
修繕積立基金:修繕積立金の100~150か月分
管理基金も修繕積立基金も物件によって費用は異なりますが、一般的な1Kタイプのマンションの場合、合計で30~50万円万円程度はかかると考えておきましょう。
⑥固定資産税・都市計画税(購入した年)
不動産を所有すると毎年「固定資産税」と「都市計画税」が発生します。
新築の場合、購入初年は支払が免除されるケースと売主と按分精算するケースがあるため、事前に確認しておきましょう。中古の物件を購入した年は、以前の所有者と分割した額を日割り計算し精算することになります。
支払額の目安
●固定資産税額=固定資産税評価額×標準税率(1.4%)※
●都市計画税額=固定資産税評価額×制限税率(最大0.3%)※
※税率は自治体や年度によって異なる場合があります。
※新築マンションの固定資産税は税額減額措置によって2026年3月31日までの購入分は2分の1に減額されます。
東京都心の1Kタイプ25㎡の新築マンションの場合は、1年分の固定資産税と都市計画税を合わせても約8万円程度です。
⑦不動産取得税
不動産を新たに購入すると不動産取得税も発生します。これはすぐに必要になる費用ではありませんが、約半年ほどで納付書が届きます。納付期限もあるので備えておきましょう。
毎年発生するものではなく、取得した際の一度のみの支払いです。
支払額の目安
不動産取得税は、取得した不動産の「固定資産税評価額」の4%※とされていますが、2027年3月31日までの軽減措置で「土地及び住宅」の税率は3%になっています。
支払額の目安は15~25万円程度です。
4.まとめ
不動産投資の初期費用は物件購入価格、もしくは売買代金の一部に充てる売買代金の一部に充てる「頭金」と売買代金以外にかかる「諸費用」に分かれます。不動産投資を検討する際は、物件の購入代金や頭金だけでなく、この「諸費用」がかかることを把握しておくことが重要です。
諸費用はローンには含まれず、基本的に自己資金で支払う必要があるため、購入計画を立てる際には事前に試算しておくことが重要です。不動産投資を始める前には金融機関や不動産会社から諸費用の見積もりを取得し、総額を把握した上で自己資金のシミュレーションを行いましょう。
また、実際に似た物件を運用しているオーナーに相談するのも有効な方法です。購入前に綿密なシミュレーションを行って初期投資額を正確に把握することで、リスクを抑えた投資判断が可能になるでしょう。