不動産小口化商品とは?3つの種類とメリット・注意点をわかりやすく解説

将来に向けた資産形成への関心が高まる中、多様な投資手法が注目されています。

特に、これまで多額の自己資金が必要とされてきた「不動産投資」の分野において、新たな選択肢として存在感を増しているのが「不動産小口化商品」です。

不動産小口化商品は、一般的な不動産投資と比べ、少額から始められるという特徴があり、その手軽さから注目を集めています。その一方で、配当の遅延や行政処分を受けた事例もあり、どのような商品なのか、その安全性は大丈夫なのか関心をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

だからこそ、投資を検討する上では商品の仕組みやリスクを正しく理解することが不可欠です。

この記事では、不動産小口化商品の基本的な仕組みから、その種類、投資対象ごとの特徴、そして投資を成功させるための注意点を分かりやすく解説します。

ご自身の資産形成における選択肢を広げるための第一歩として、ぜひご一読ください。

目次

不動産小口化商品とは?

まず、不動産小口化商品がどのようなものか、その定義と特徴について解説します。

不動産特定共同事業法(不特法)に基づく投資商品

不動産小口化商品とは、「不動産特定共同事業法(不特法)」という法律に基づき、事業者が投資家から資金を集めて不動産の取引や管理を行い、そこから得られた収益を投資家に分配する仕組みの投資商品です。

具体的には、一棟マンションや一室単位の区分マンション、区分オフィスビル、商業施設といった高額な不動産を、個人でも投資しやすいよう少額の単位に「小口化」して販売する仕組みです。

これにより投資家は、一人では購入が難しい優良な不動産にも無理のない範囲で投資ができるようになり、購入した口数に応じて賃料収入や将来的な売却益といった収益の分配を受けられます。また、商品タイプによっては不動産の所有権の一部を得られる点も大きな特徴です。

この不特法は、事業者が守るべきルールを厳格に定め、投資家の保護を図ることを目的としています。そのため、事業者は厳しい基準をクリアし、国や都道府県から許可を得なければならず、投資家にとって一定の安心材料となっています。

一般的な不動産投資との違い

不動産小口化商品は、ワンルームマンション投資などの一般的な現物不動産投資とはいくつかの点で異なります。

最大の魅力は、少額から始められる点です。現物不動産投資では金融機関からの融資を活用することが一般的ですが、それでも多額の頭金が必要となるケースが少なくありません。

一方、不動産小口化商品は一つの不動産を小口化しているため、比較的少額の資金で始めることが可能です。そのため、投資のハードルが格段に低いと言えます。

また、運用の手間がかからない点も大きな特徴です。現物不動産投資では、物件の購入後は入居者募集や家賃回収、建物の維持管理、トラブル対応などをオーナー自身が行うか、管理会社に委託する必要があります。

しかし、不動産小口化商品では、これらの運営・管理はすべて事業者が行うため、投資家は基本的に分配金の受け取りを待つだけで済みます。多忙な方でも、手間をかけずに不動産からの収益を享受できるのです。

【種類別】不動産小口化商品の3つの仕組み

不動産小口化商品は、投資家と事業者の契約形態によって、大きく「任意組合型」「賃貸型」「匿名組合型」の3種類に分けられます。 それぞれ特徴が異なり、特に「所有権」の有無が大きな違いとなります。

種類 主な特徴 所有権の有無
任意組合型 不動産を複数の投資家で共同所有する あり
賃貸型 出資後に事業者と賃貸借契約を締結する あり
匿名組合型 事業者へ出資し、不動産事業の収益分配を受ける なし

任意組合型:現物不動産に近い形で共同所有

任意組合型は、複数の投資家が組合を組成し、共同で不動産を購入・所有する仕組みです。投資家は出資額に応じた不動産の共有持分(所有権)を持つことになります。

実際の不動産の運用・管理は、専門家である事業者に業務執行を委任する形で行われ、そこから生じた賃料収入などの利益が出資割合に応じて分配されます。

所有権を持つため、会計上は現物不動産投資と同様に扱われます。減価償却費を計上できる、相続時に相続税評価額で評価されるといった税務上のメリットを享受できる可能性がある点は、他のタイプにはない大きな特徴です。

現物不動産投資のメリットを享受しつつ、少額から始めたいと考える投資家に適したタイプと言えるでしょう。

賃貸型:所有権を得て、事業者に賃貸する

賃貸型も、任意組合型と同様に、投資家が対象不動産の共有持分(所有権)を購入する仕組みです。

任意組合型との違いは、不動産を共有した後に、投資家が事業者に対してその不動産を賃貸し、事業者が第三者に転貸(又貸し)する点にあります。

投資家は、事業者との間で締結した賃貸借契約に基づき、毎月安定した賃料収入を受け取ることが期待できます。

このタイプも所有権を得られるため、税務上のメリットが見込めます。運用を事業者に一任できる手軽さと、所有権という資産性、安定収益を見込めるため、手堅い投資対象として有効な選択肢となります。

匿名組合型:事業者に出資し、収益の分配を得る

匿名組合型は、投資家が不動産事業を行う事業者に出資し、その事業から生じた利益の分配を受ける仕組みです。

このタイプでは、不動産の所有権は事業者にあり、投資家は所有権を持ちません。あくまで事業者に対する出資者という立場になります。

複数の投資家から集めた資金を元手に、事業者が不動産の取得・運用を行い、得られた収益を出資者に分配金として支払います。

近年急速に市場が拡大している「不動産クラウドファンディング」の多くは、この匿名組合型を採用しています。所有権がないため登記などの手続きが不要で、より手軽に、少額から大型の不動産案件に投資できる点が最大のメリットです。

ただし、不動産そのものを所有するわけではないため、任意組合型や賃貸型のような税務上のメリットは享受できません。

【投資対象別】不動産小口化商品の2つのタイプ

不動産小口化商品は、投資する不動産の「状態」によっても、「不動産所有型」と「開発型」の2つに大別されます。

タイプ 主な特徴 注意点
不動産所有型 すでにある賃貸マンションやビルなどが投資対象 不動産自体のポテンシャル(立地、稼働率など)の選定が重要
開発型 これから建設・開発する不動産が投資対象 事業計画の実現性にリスクが伴うが、高いリターンも期待できる

不動産所有型:実在する不動産に投資する安定性

不動産所有型は、すでに完成し、稼働している賃貸マンションやオフィスビル、商業施設などが投資対象となります。

実在する不動産への投資であるため、物件の立地や築年数、現在の入居率(稼働率)、周辺の賃貸需要などを事前に確認でき、収益性を予測しやすいのが特徴です。

一般的な不動産投資と同様に、安定した賃貸収入(インカムゲイン)を主な収益源とします。ただし、安定しているからこそ、投資対象となる物件の選定が極めて重要になります。

空室率が高まれば分配金が減少するリスクがあり、また、将来的に売却を想定した商品の場合は、市況の変動によって想定価格で売却できず、元本の償還に影響が出る可能性も考慮する必要があります。

開発型:将来の不動産開発に投資する成長性

開発型は、これから建設するマンションや、宅地造成、再開発プロジェクトなどが投資対象となります。

まだ実物がない段階で、事業者の開発計画に対して投資を行うため、不動産所有型に比べて事業リスクは高くなります。

例えば、建設が計画通りに進まない、あるいは許可が下りないといった事態が発生すれば、配当金の支払いや出資金の償還が滞る可能性もゼロではありません。

その一方で、開発事業が成功した際には、土地や建物の価値が大きく上昇し、高いリターン(キャピタルゲイン)が期待できる魅力があります。

運用期間は比較的短期に設定されることが多く、短期で大きな収益を狙いたい投資家にとっては魅力的な選択肢となり得ますが、近年話題となっている大規模な開発プロジェクトも、この開発型に分類されることがあるため、投資する際は十分に注意が必要になります。

まとめ

本記事では、不動産小口化商品の仕組みから種類、投資対象による特徴までを解説しました。不動産小口化商品は、現物不動産投資に比べて少額から始められ、運用の手間がかからないという大きな魅力を持っています。

しかし、その契約形態(任意組合型、賃貸型、匿名組合型)や投資対象(不動産所有型、開発型)によって、得られる権利やリターン、そしてリスクの性質は大きく異なります。

少額から始められる手軽さから、安易に投資判断を下すのではなく、まずはそれぞれの商品の特性を深く理解することが不可欠です。

ご自身の投資目的やリスク許容度と照らし合わせ、どのタイプの商品が最適なのかを慎重に見極める必要があります。 そのためにも、信頼できる不動産会社やファイナンシャルプランナー(FP)といった専門家から、事業内容やリスクについて十分な説明を受け、納得した上で投資を実行することが、資産形成を成功に導くための最も重要な鍵となるでしょう。

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この記事の著者

時代に合った不動産投資を、具体的な事例やノウハウを元にリアルに情報発信している「スクエア編集部」。 40年以上、物件開発から賃貸・建物管理、仲介を行ってきた老舗グループ企業による運営の下、読者に確かな不動産投資を推奨すべく活動しています。

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