2026年に入り、中東情勢の緊迫化が世界経済の大きな焦点となっています。特に、2月28日に開始されたアメリカとイスラエルによるイランへの攻撃や、ホルムズ海峡の事実上の封鎖は、原油供給への懸念を高めており、原油価格の上昇が連日報じられています。
不動産市場にとっても、この原油高は決して無関係ではありません。不動産は「安定資産」とされる一方で、原油などのエネルギー価格と密接に結びついており、大きな影響を受ける可能性が高いです。
今回は、2記事に渡って原油高が不動産市場に与える影響を整理していきます。後編となる本記事では、原油高による不動産市場への影響について予測していきます。緊張が続く情勢とその影響を整理し、今後の対策を検討していきましょう。
前編のおさらい|中東情勢と日本経済への影響
2026年2月28日に行われたアメリカ・イスラエルによるイラン攻撃を発端に、イランはホルムズ海峡を事実上封鎖しました。ホルムズ海峡は、原油や液化天然ガスの主要な輸送路であり、ここが封鎖されたことでエネルギー輸送は深刻なボトルネックに直面しています。
こうした中東情勢の緊迫化を背景に原油価格が上昇し、日本でもインフレ圧力が強まっています。また、金融市場は中東情勢に振り回される形で不安定化しており、金利もインフレを抑えるために上昇する可能性が高まっています。
不動産市場も、こうした状況の影響を複合的に受けざるを得ません。今後の不動産投資を判断するためには、今後の市場にどのような影響が出るのか整理することが不可欠です。
不動産市場への影響予測①|「物件」
原油高やインフレの進行は、不動産市場にも大きな影響を及ぼします。物件の価格や供給、資産価値もその例外ではありません。
本章では、物件の視点から今後の市場動向を整理します。
価格上昇と供給減少が同時進行か
物件は、販売価格の上昇と供給減少が同時進行する可能性があります。
物件の建築コストは元々上昇傾向にありましたが、中東情勢の悪化を背景とした原油高により、その上昇圧力はさらに強まることが予測されます。すでに鉄やセメントといった建材価格に加え、輸送費も上昇しており、今後はエネルギーコストの増加も見込まれているからです。
さらに、人手不足を背景とした人件費の上昇も続いていることから、建築コストは一段と高まっていくことが懸念されます。
こうしたコスト増は、最終的に価格へ転嫁されるのが一般的です。分譲価格には上昇圧力がかかり、デベロッパーも採算性の観点から供給を抑制する可能性があります。
その結果、新築物件は「価格上昇」と「供給減少」が同時に進む局面に入ると考えられます。すでに、注目度の高い再開発案件も計画が見直される事例が複数報じられている点も見逃せません。
資産としての再評価が進む可能性
資産としての側面では、中東情勢の悪化によりインフレの再加速が懸念されていることから、さらに再評価が進むと考えられます。
もともと日本はインフレ局面にあり、価値が目減りしにくい実物資産への関心は高まる傾向にありました。実際、2026年の地価公示も上昇基調にあり、インフレがさらに再加速するようであれば、こうした傾向に拍車がかかり、物件の資産価値はさらに再評価される局面が訪れるかもしれません。
加えて、金融市場の不安定化によって株式や債券の価格変動が大きくなる中で、新たな投資や資産の一部を不動産にシフトする動きが見られるかもしれません。特に、都心部や駅近といった流動性の高い優良物件は、もともとの需要の強さと再開発の進行が重なって将来性も見込まれやすいため、投資資金が集中しやすいと考えられます。
一方で、こうした条件を満たさない物件については、需要の弱さが意識されやすく、価格に下落圧力がかかる可能性があります。その結果、都市部と地方、あるいは物件の条件による二極化は、今後さらに進むことが予想されます。
不動産市場への影響予測②|「投資・金融」
では、投資と金融の視点では、どのような影響が考えられるのでしょうか。
短期的に見ると、原油高によって政策と市場の両面から長期金利に上昇圧力がかかっていることから、物件をローンで借り入れるコストが増え利回りが悪化する可能性があります。このような状況の場合、物件の購入や投資判断は慎重化し、不動産需要の低下で市場が冷えることが予測できます。
一方で、建築コストの増加は、時間が経つにつれ家賃へと転嫁され、賃料上昇へと働きます。また、今後物件の供給も減少するとみられているため、希少性と実物資産としての魅力が相対的に高まり、中長期的に資金が流入しやすくなるでしょう。
このため、短期的には不動産市場にブレーキがかかるものの、中長期的には追い風となる可能性があります。
物件の購入や投資の判断では、原油高による影響を短期と中長期を切り分けて捉える視点が欠かせません。足元では借入コストの上昇が市場の重荷となる一方、時間軸を延ばせば賃料上昇や実物資産としての需要拡大も期待されるためです。
目先の市場の冷え込みに目を向けつつも、中長期的な資産価値の変化を見据えた判断が求められる局面といえるでしょう。
不動産市場への影響予測③| 「賃貸」
賃貸市場の視点では、生活費の上昇が入居者の家賃負担に影響を与えるでしょう。原油高を背景とした物価上昇により、食費や光熱費などの日常支出が増加し、結果として家計全体に占める家賃の負担感が高まるためです。
一方で、賃貸経営の側から見ると、共用部の光熱費や修繕費の上昇によって、物件の維持管理コストは増加しやすくなります。これに、建築コストの上昇や新規供給の伸び悩みが重なれば、時間の経過とともに賃料へコストが転嫁されていくでしょう。
ただし、生活費全体が上昇する中では、すべての物件で同じように賃料を引き上げられるわけではありません。賃料への転嫁のしやすさは、立地や物件の競争力、周辺の需給環境によって異なると考えられます。
これらを踏まえると、今後の賃貸市場では賃料に緩やかな上昇圧力がかかる可能性はありますが、こちらも二極化が進みそうです。入居者にとってはさらなる負担増となる一方で、立地や需要に恵まれた物件では、賃料の上昇が許容されていくことも想定できます。
まとめ
原油高は、不動産市場において「物件価格の上昇」「実物資産への資金流入」「賃料の上昇」という複合的な影響をもたらす可能性があります。現在のような不安定な局面では、単に資産を保有するのではなく、「どの資産を選ぶか」が肝心です。
実体を持つ不動産は、現金などに比べてインフレの影響を受けにくく、資産防衛の手段となり得ます。インフレの再加速が懸念されているからこそ、「早く持つ」ことが資産を守るうえで効果的な対策となるでしょう。ただし、判断する際は値上がり益だけでなく、安定した継続収入が見込めるかも重要なポイントになります。
不動産市場を見ると、新築物件は価格上昇圧力が働いており、相対的に今が一番安い局面なのかもしれません。一方、既存物件でも都心などの好立地であれば、底堅い需要を背景に安定した価値を維持しやすいと考えられます。
こうした特性を踏まえると、優良な物件であるほどインフレ下における資産の「受け皿」となり得るため、「早めの購入、投資」こそリスクへの備えにつながるでしょう。
記事前編では、中東情勢の整理と日本経済への影響について解説しています。こちらも合わせてご覧ください。


