2025年5月、不動産情報を発信しているアットホームは、東京23区の30㎡以下・単身者向けワンルームマンションの平均賃料が10万円を突破したと発表しました。これは、前年同月比で+8.4%という大幅な上昇であり、12ヵ月連続で高値を更新し続けています。
また、30~50㎡のカップル向け賃貸でも平均賃料が全国的に高騰しており、各地で最高値が更新されています。東京23区では前年同月比+9.9%の上昇が記録されました。
このような背景には、昨今の住宅価格の高騰により購入を諦めた層が増えたことで、賃貸需要が高まっているという事情が伺えます。
本記事では、このような賃料上昇の背景と、不動産投資への影響について解説していきます。
賃貸物件の需要増加と賃料上昇の4つの背景
まずは、東京23区を中心に全国的に賃貸物件の需要が増加し、賃料が上昇している原因を見ていきましょう。
若年層の賃貸物件の需要増加
コロナ禍以降、本格的な経済活動の再開によって、都市部には進学・就職・転職に伴う若年単身者層の人口流入が増加しています。特に、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)では転入者数が転出者数を大きく上回り、2024年には13万5843人の人口増加が発生しました。
その結果、ワンルームマンションの需要がさらに増加して、賃料上昇に繋がったのです。
若年単身者層は通学・通勤や生活の利便性を重視する傾向が強いため、コンパクトで駅近な物件は根強い人気があります。そのため、都市部におけるワンルームマンションなどは入居率が高く、賃料が上昇しても空室が発生しにくい状況が続いているのです。
単身者向け賃貸物件の供給減少
昨今は、単身者向け賃貸物件の需要が高まる一方で、資材や人件費の高騰による建築コスト増や都市部における開発用地の激減によって、ワンルームマンションの新築供給は減少しています。
また、晩婚化や独身率の上昇によって単身世帯が増加したことで、一昔前の「ワンルームマンション=一時的な住まい」という認識が変化し、現在では5年以上の長期入居が当たり前の時代になりました。その結果、既存の物件に空きが出にくくなり、新規入居者が借りられる部屋が減少しているのです。
このような賃貸物件の供給減少と入居者の流動性の低下により、都市部のワンルームマンションは築年数が経過していても賃料が下がりにくい傾向が伺えます。
不動産価格や修繕管理費の高騰
近年はインフレの影響で資材や人件費が高騰しているため、
- 建物や土地の価格上昇
- 不動産価格の上昇に伴う固定資産税の上昇
- 不動産の修繕管理費の上昇
などの要因により、賃貸物件のオーナーが負担する費用が大幅に増加しています。このような経済事情の変化は、オーナー側が入居者を募集する際の設定賃料を引き上げる理由になるため、賃料上昇という形で反映されやすいのです。
都市部の賃料の今後の見通しとは?
現在、東京23区を中心とする都市部での平均賃料は過去最高水準に達しています。この流れは、先述している賃貸物件の需要増加や不動産価格の上昇が続く限り、継続する可能性が高いと考えられます。
また、賃料上昇を後押しする要因として、
- 住宅ローン金利の上昇により持ち家の購入を断念する人が増加している
- 都市部の賃貸物件は海外投資家オーナーが増加している
→海外では景気の変動を即座に賃料へ反映させる文化が根強く、また、日本は他の先進国と比べて不動産価格や賃料が比較的割安なこともあり、賃料を国際水準の物価に引き上げる動きがある
という背景が挙げられます。
円安が続く現在、海外インバウンド需要も増加傾向にあるため、今後も海外投資家オーナーの不動産購入が進み、更なる不動産価格高騰や賃料への影響も考えられるでしょう。
今から不動産投資を始める時の注目ポイント3選
以下では、都市部を中心に賃貸物件の需要増加や賃料上昇が続く現在で、不動産投資を始める際に注目すべき3つのポイントを紹介します。
「賃料は不動産価格の後に変動する」というサイクル
賃貸物件の賃料は、「不動産価格の上昇→賃貸物件の需要増加→賃料の値上げ」というサイクルで変動します。このサイクルにおいて「不動産価格の上昇」の段階では、物件の購入価格が高騰して利回りが低く見える特徴があるため、「今不動産投資を始めても儲からない」と感じてしまう投資家は珍しくありません。
しかし、賃料は賃貸物件の需要増加や景気の変動の後に値上がりする構造であるため、1~2年後には利回りが大きく向上するケースが多いのです。この不動産サイクルは、東京23区をはじめとする都市部で顕著に現れる傾向があるため、数年先を見据えた不動産投資を行うことが大切です。
住宅ローン金利の動向も意識しよう
2025年1月、日本銀行は政策金利を「0.25%→0.5%」に引き上げる発表をしました。
それに伴い住宅ローンの金利は、銀行間での競争もありますが、
- 変動型で「約0.1%~0.2%」の上昇
- 10年固定型で「約0.3%~0.5%」の上昇
- 前期固定型(フラット35など)で「約0.4%」の上昇
となっています。住宅ローンは数千万単位での借り入れになることが多いため、物件購入価格が同じでも、僅かな金利上昇は毎月の支払総額が増加する原因になるのです。
現在はこのような状況であるため、
- 毎月の支払予定額を基に住宅購入を検討していた単身者
- 共働きで子育てを見据えて住宅購入を検討していた夫婦
などの層が住宅購入を見送るようになり、賃貸物件の需要が急増しています。
政策金利は毎年4月と10月に見直されるケースが多いため、不動産投資を成功させるには、住宅ローン金利の変動による賃貸需要の変化にも注目することが大切です。
不動産投資は賃料を引き上げられる立地の物件で始めるよう
インフレが続く現在では、不動産の購入価格や修繕管理費が高騰するため、「それに連動して賃料の引き上げが可能かどうか?」で不動産投資の成否が分かれます。
例えば、
- 進学や就職による若年層の流入が多いエリア
- 駅近で交通アクセスが良好なエリア
- 国内外から認知されていて、ブランド価値が高いエリア
などにある物件は、常に高い賃貸需要が見込めます。
そのため、「購入後に賃料引上げの余地があること」と「賃料を上げても入居者が確保できること」をセットで見据えた投資物件を選ぶことが大切です。
まとめ
コロナ禍以降、東京23区を中心とする都市部では、若年層の進学や就職に伴う転入者が増加しました。さらに、金利上昇によって住宅の購入を断念する世帯も増加しているため、賃貸物件の需要が急激に高まっています。そこに、昨今のインフレの影響が押し寄せたことで、2025年に東京23区でのワンルームマンションの平均賃料が初の10万超えを記録しました。
これから不動産投資を検討している方は、住宅ローン金利の動向や賃貸需要の変化を意識する必要があります。また、「景気の変動に連動した賃料引上げ」と「賃料を引上げても入居者を確保できる」という点を両立できる物件を選ぶことが大切です。