【2025年5月】指値幅は縮小している?中古マンション売り出し価格と成約価格の差

中古マンション価格の上昇が続いているのは、多くの人がご存じと思います。今回は、東日本レインズが1月22日に発表した「首都圏不動産流通市場の動向(2024年)」のデータをもとに、売主と買主それぞれの視点から、今の中古マンション市場がどのような構造になっているのかを読み解いてみましょう。

目次

縮小する売り出し価格と成約価格の差

■首都圏中古マンション成約価格・新規登録価格の推移

(公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2024年)より作成」

まず、緑色の折れ線グラフで示された成約㎡単価に注目すると、2024年は76.9万円/㎡となっています。これは2008年の39.9万円/㎡と比較して約1.9倍に相当します。とりわけ2020年以降の上昇が顕著で、わずか4年で40%もの価格上昇が見られました(年単位)。この背景には、金利の上昇、供給不足、そして建築コストの高騰といった様々な要因があると思われます。

さらに、注目したいデータは、「成約価格」と「新規登録価格」で、この差が急速に縮まっているという点です。

グレーの棒グラフは「新規登録価格 − 成約価格(平米単価)」を示しています。2023年、2024年とその差は大きく縮小しており、2024年には、新規登録価格76.97万円/㎡に対して、成約価格は76.88万円/㎡。その差は、なんとわずか900円でした。ちなみに、2022年までの平均差は5.37万円/㎡でした。あくまでも平均の値ですが、23年・24年は大きく価格上昇となり、その分指値幅が小さくなったものと思われます。

この「価格差の縮小」は、市場が「売り手優勢」の状況が続いていることが伺えます。新築マンションの供給は減少傾向にあり、加えて建築コストの高騰が新築価格を押し上げ、中古への需要がシフトしており、その結果として、中古物件の売主が「強気に出られる」状況が続いていると考えられます。

一方で、誰もがポータルサイトを通じてエリアごとの相場を調べられるようになり、売主が「最初から適正価格を提示する」傾向が強まったという見方もできます。

成約までの日数は長期化傾向に

■新規登録価格と成約平米単価の差と成約までの日数

ここで注目すべきもうひとつのデータが、「成約までにかかる日数」と価格差の関係です。2024年の成約までの日数は約85.3日。これは、2008年以降のデータでは2020年の88.3日に次ぐ長さです。

そして、この2つのデータ(価格差と成約日数)の相関係数は −0.78。これは「負の相関」、つまり成約までに時間がかかるほど、価格差が縮まる傾向があるということを意味します。

この結果は、前述の「売主が適正価格を提示しているから価格差が縮んでいる」という仮説とは逆行しています。むしろ、売主が強気な価格を設定するために、成約に時間がかかっていると見る方が妥当でしょう。

売り手も買い手も冷静な目利きが必要

とはいえ、金利上昇や景気動向、そして「価格の天井感」といった不安材料も増えつつあります。今後は、これまで見られなかった価格交渉の余地が再び生まれてくる可能性もあるでしょう。市場が大きく動く時期だからこそ、正確な情報に基づいた判断と、冷静な目利きがこれまで以上に求められているのかもしれません。

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この記事の著者

時代に合った不動産投資を、具体的な事例やノウハウを元にリアルに情報発信している「スクエア編集部」。 40年以上、物件開発から賃貸・建物管理、仲介を行ってきた老舗グループ企業による運営の下、読者に確かな不動産投資を推奨すべく活動しています。

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