不動産投資の税金と節税

不動産投資は青色申告が良い?白色との違いやメリット・デメリット

不動産投資をはじめると毎年確定申告が必要になりますが、青色申告と白色申告どちらにすべきか悩んでしまいますよね?

一見、最大65万円の控除が得られる青色申告が良いように思えますが、白色申告よりかなり手間がかかります。
不動産投資の事業規模によってはメリットを感じない人もいるかもしれません。

今回は不動産投資における、青色申告と白色申告の違い、青色申告のメリットとデメリットなどを解説していきます。特徴を把握して慎重に申告方式を選びましょう。

【目次】

1.不動産投資の確定申告の方法
 青色申告とは
 白色申告とは
 青色申告と白色申告の違い
2.青色申告のメリット
 65万円・10万円の特別控除
 赤字を3年間繰り越せる
 経費にできるものが多い
 経費にできるものが多い
3.青色申告のデメリット
 書類の事前提出が必要
 提出書類と保存帳簿が多い
 複式簿記で記帳しなければならない特別控除は黒字分に適用される
 特別控除は黒字分に適用される
4.不動産投資では青色申告と白色申告どちらにすべき?
5.まとめ

1.不動産投資の確定申告の方法

確定申告の方法には青色申告と白色申告の2種類があります。不動産所得などの一定条件を満たす人は、税制上で有利な取り扱いが受けられる青色申告制度が利用できます。

青色申告とは

青色申告とは1年間に生じた所得金額を申告する際に、一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をする人が所得金額の計算などについて有利な取扱いが受けられるという税制上の制度です。
※参考:国税庁「No.2070青色申告制度」

青色での確定申告は以下の条件を満たす人のみ認められています。

・不動産所得、事業所得、山林所得のある人
・申告する年の3月15日までに開業届と青色申告承認申請書を提出している人

青色申告は規定に準じた複式簿記の記帳や書面の提出、保管をすることによって、特別控除や赤字の繰り越しなど様々な税制上の特典が得られます。

白色申告とは

白色申告とは、青色申告のような税制上で有利になる特典がない代わりに、簡易的な記帳や記録が認められている申告納税制度です。青色申告の承認を受けていない人は自動的に白色申告となります。

以前は会計帳簿の作成義務がありませんでしたが、2014年の法改正で白色申告も記帳が必須となりました。
ただし、会計知識をそれほど必要としない簡易簿記で済む上、青色申告と比べると提出書類や保管書類などが圧倒的に少ないため手軽さは変わりません。

青色申告と白色申告の違い

青色申告と白色申告の大きな違いは以下の4つです。
・税制上の優遇措置の有無
・事前提出書類の有無
・複式簿記か簡易簿記か
・提出書類・保存帳簿の量

青色申告では10万円から65万円の特別控除の他、赤字繰り越しや経費の優遇措置などがありますが白色申告では適用されません。

一方で必要書類や帳簿作成の手間をみると、青色申告は事前提出書類が2つ、申告時の提出書類が4~5種、保存帳簿が6~7種あり、控除額によって複式簿記が求められます。しかし、白色申告ではその半分以下の書類量で簡易簿記、事前提出書類もありません。

青色申告の大きな優遇措置は魅力的ですが、それなりの手間と時間がかかります。メリットとデメリットを見極めてから申請方法を決めましょう。

2.青色申告のメリット

手続きが大変だといわれる青色申告ですが、不動産投資上のメリットはたくさんあります。

65万円・10万円の特別控除

アパート10室以上または貸家5棟以上の不動産所得がある人は65万円の特別控除、マンション1室以上の規模の人は10万円の特別控除が青色申告で受けられます。所得を大きく減らすことができるので所得税を抑えるのに効果的です。

赤字を3年間繰り越せる

青色申告では事業の赤字を3年間繰り越せます。課税対象の収支が1年ごとの計算だと、利益が出た年と赤字の年が交互にきた場合に税金の支払いが苦しくなりますが、3年間赤字が繰り越せると下記のように相殺して収支のバランスを調整できます。

【1年目】100円の赤字→【2年目】50万円の赤字→【3年目】200万円の黒字
=3年間の収益 所得50万円

青色事業専従者給与(家族の給与)を全額経費にできる

同一生計の家族への給与は専従者給与として経費にできますが、白色では配偶者86万円、その他親族は50万円までという上限があります。青色申告の場合は妥当性があると認められれば全額経費にすることが可能です。

青色事業専従者給与が発生する場合は、申告する年の3月15日までに「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出しましょう。

自宅の家賃や光熱費を経費にしやすい

自宅をオフィスにしている場合は家事按分制度を利用して、家賃や光熱費、通信費などの一部を経費として計上できます。

白色申告の場合は「業務での使用割合が50%以上」「プライベートと業務の使用割合が明確に区別できる」などの厳しい条件がありますが、青色申告では妥当性が認められれば比較的簡単に経費計上が可能です。

3.青色申告のデメリット

青色申告のデメリットは何といっても書類や記帳の煩雑さでしょう。注意点と合わせてみていきましょう。

書類がその年の申告に間に合わない場合がある

青色申告には事前申請が必要です。初めて青色申告する人はその年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を税務署に提出しなければなりません。また、新規で開業した場合は業務開始から2カ月以内に「個人事業の開業届」も必要です。「青色申告承認申請書」と同時に提出しておきましょう。

それらの提出が期限に間に合わない場合は、その年は白色申告となり青色申告は翌年からとなります。

提出や保存義務のある書類・帳簿が多い

青色申告には白色申告の倍以上の書類や帳簿が必要です。一覧表を見てみましょう。

青色申告
(65万円控除)
青色申告
(10万円控除)
白色申告
提出書類
・青色申告承認申請書
・開業届
・確定申告書B
・青色申告決算書
・賃借対照表
・損益計算書
・第三表
※分離課税用(事業所得の他に譲渡所得がある場合)
・第四表
※損失申告用(赤字で申告する場合)
・青色申告承認申請書
・開業届
・確定申告書B
・青色申告決算書
(損益計算書)
・第三表
※分離課税用(事業所得の他に譲渡所得がある場合)
・第四表
※損失申告用(赤字で申告する場合)
・確定申告書B
・収支内訳書
保存が必要な帳簿
・総勘定帳
・仕訳帳
・現金出納帳
・売掛帳
・買掛帳
・固定資産台帳

・現金出納帳
・売掛帳
・買掛帳
・固定資産台帳
・経費帳
・法定帳簿
・任意帳簿
保存が必要な書類
・決算の棚卸表
・受領した請求書、納品書、送り状、領収書など

左と同様 左と同様


青色申告の会計関係書類は日頃から細かい計上と管理が必要になることが分かります。
その他にも申告時の共通提出書類として、身元確認書類や医療費や各種保険料の控除証明などの準備も求められます。

65万円の特別控除は複式簿記とe-Taxが必須

アパート10室以上または貸家5棟以上の不動産所得がある人は、青色申告で65万円の特別控除が受けられますが、その場合は複式簿記での帳簿記帳が必須です。
また、e-Taxもしくは電子帳簿保存を行わなければ満額控除が受けられません。

単式簿記で帳簿作成した場合の特別控除額は10万円、e-Taxか電子帳簿保存以外で申告した場合は特別控除額55万円と減ってしまうので注意しましょう。

特別控除は黒字分に適用される

青色申告の一番のメリットともいえる特別控除ですが、不動産収支の黒字分にのみ適用されるので常に全額控除が受けられる訳ではありません。

例えば、10万円の特別控除が受けられる青色申告でも、利益が7万円だった場合の特別控除額は7万円までとなります。赤字だった場合ときは当然、控除0円となるので赤字になりやすい1~2年目で控除を期待するのは難しいでしょう。

4.不動産投資では青色申告と白色申告どちらにすべき?

不動産投資での青色申告と白色申告はそれぞれにメリットとデメリットがあり、どちらが良いのかは事業規模や投資スタイルによって変わります。

本格的に不動産投資に取り組んでいて、ある程度の事業収入があり、節税効果を重視したい人は青色申告が良いでしょう。
不動産投資に時間をかけられる人や税理士を依頼できるのなら青色申告の優遇措置は大きなメリットです。

反対に、マンション1~3部屋程度の投資規模の人や、始めたばかりで事業収入があまり見込めない人は、書類や記帳の手間がかかる割に控除の見返りが少ないので白色申告の方が良いという場合もあるでしょう。

最近は法律の改正や便利な会計ソフトの参入で、青色申告と白色申告にそれほど手間の差はないとする意見もありますが、他に本業がある人や経理作業が苦手な人など、やりやすさは人それぞれです。

まずは白色で申告して、数年後に収支が安定したら青色申告に変えるという方法も可能なので、ご自分の投資のスタイルや収支状況に合わせて長期的な目線で考えることが大切です。

5.まとめ

不動産投資の青色申告と白色申告は、税制優遇の有無と申告の手間に大きな違いがあります。

青色申告は節税効果が高い反面、一定の要件を満たす正しい申告をする者に対する税制優遇制度なので、事前申請や多くの書類提出、複式帳簿など細かな記録が求められます。
一方、白色申告は税務面での優遇措置は一切ありませんが、簡易的な申請で済みます。

青色申告の節税効果は不動産投資の収支状況によっては労力に見合わない場合もあり、白色申告とどちらが良いかは人それぞれです。
メリット・デメリットをふまえて、自身の投資スタイルに合わせて選ぶのが得策といえそうです。