国土交通省の「建築着工統計調査」によれば、2025年の分譲マンション着工戸数は全国で8万9,888戸となり、前年比12.2%減と大きく落ち込みました。首都圏でも、投資用マンションを含む分譲マンションの新規供給が絞られる一方で、供給を支える再開発事業には、都心以外にも広がりを見せる動きがあります。
国土交通省が公表する「首都圏整備の状況」によれば、東京都心に近いエリアほどマンション(共同分譲住宅)の供給比率が高く、郊外に離れるほど戸建住宅の比率が高まるという構造は今も続いています。
一方で、マンション需要を支える再開発事業は、都心だけでなく神奈川・埼玉・千葉の近隣3県でも活発化しています。本記事では、公的統計が示す「供給構造の変化」を踏まえ、投資用マンションを選ぶ際に押さえておきたい視点を整理します。
この記事を監修した人

清水 剛 (しみず つよし)
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
FP(ファイナンシャル・プランニング技能士)2級
■ プロフィール
不動産デベロッパーにて不動産投資業界に26年従事。国内で16年、海外市場では10年にわたり、台湾・シンガポール・香港などの投資家へ日本の不動産販売・販促を手がける。国内外の投資家ニーズに精通し、メディア出演や20回超のセミナー登壇を通じ、初心者から経験者まで幅広い層へ不動産投資の実践的な知見を発信している。
■ メディア出演歴
BS12(トゥエルビ) / 日経CNBC
長期的に供給が絞られる分譲マンション市場
国土交通省「建築着工統計調査」によれば、2025年の分譲マンション着工戸数は全国で8万9,888戸となり、前年比12.2%減という大きな落ち込みとなりました。床面積でみても649万7,000平方メートル・前年比10.0%減と、戸数・規模の両面で供給が絞られています。
投資用マンションを含む分譲マンション市場全体が、建築コストの上昇を背景に、長期的な供給抑制局面に入っていることがうかがえます。
背景にあるのは、建築資材や工事費の高騰、建設業界の人手不足に伴う人件費の上昇、東京23区における用地取得競争の激化です。土地の仕入れ値と建築費がともに上昇すれば、デベロッパーが利益を確保できる価格水準も押し上げられ、供給できる物件は自然と絞られていきます。
短期的には四半期ごとの増減があり、単月・単期の数字だけを見ると分かりにくい面がありますが、国土交通省の発表によれば、2025年度の新設住宅着工戸数は全国で前年度比12.9%減の71万1,171戸となるなど、住宅市場全体が弱含みで推移しています。
分譲マンションについても、短期的な増減にかかわらず、供給が伸びにくい市場環境が続いていると捉えるのが妥当でしょう。
再開発の動きは郊外にも広がっている
供給戸数の推移以上に注目したいのが、マンション需要を下支えする再開発事業の広がりです。国土交通省の「都市計画現況調査」によれば、首都圏における市街地再開発事業の地区数(施行済みを含む)は、2018年度の443地区から2022年度には528地区へと約19.2%増加しました。
地域別にみると、東京都は239地区から270地区へと約13.0%増加した一方、神奈川県・埼玉県・千葉県の近隣3県は160地区から209地区へと約30.6%増加しており、伸び率では近隣3県が東京都を上回っています。周辺4県も44地区から49地区へと増加しており、再開発の動きは東京都心だけでなく、その外側のエリアにも広がりつつあることがわかります。
つまり、マンション需要を支える再開発事業そのものが、都心に限らず近隣3県でも活発化しているのが実態です。「都心か郊外か」という二択ではなく、「再開発がどこまで広がり、どこで需要を生み出しているか」という視点で市場を見ることが大切です。
【出典】建築着工統計調査報告(令和7年計分)(国土交通省):https://www.mlit.go.jp/report/press/joho04_hh_001350.html/首都圏整備の状況(令和7年版首都圏白書)(国土交通省):https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/content/001748919.pdf
「都心」の希少価値はさらに高まる
全体的に新築供給の数が減り、開発エリアの裾野が広がっていることは、東京23区などの都心部にあるマンションの希少性をさらに高めるといえるでしょう。
立地は、都心に近いほどは賃貸需要が厚く、供給が郊外化することで、空室リスクや家賃下落リスクはさらに改善され、なかには賃料や市場価値がさらに上昇する物件も出てくることが予想されます。供給が減ることは、価値が維持されやすいため、不動産投資家にとってはマイナスではありません。
一方で、新たに取得しようとしている投資家にとっては、都心の物件を取得しにくくなることが考えられます。
「都心」の定義は時代とともに変わる
今回のデータをもとに考えるべきなのは、「都心」と呼ばれるエリアが広がりつつあるという点です。都心の定義そのものが、時代とともに変化していることも忘れてはならない視点です。
実際、かつては都心の周辺エリアとみなされていた街が、再開発や交通インフラの整備を経て、新たな都心エリアへと変化してきた例は少なくありません。川崎、武蔵小杉、横浜といったエリアは、その代表例といえるでしょう。これらの街は、大規模な再開発やターミナル駅周辺の整備、交通利便性の向上を経て、独自の資産価値を持つエリアへと変貌し、都心で呼べるような発展を遂げています。
こうした変化を踏まえると、現在再開発が進んでいるエリアの中にも、将来的に「都心」の仲間入りをする街が出てくる可能性は十分にあります。
「次に選ばれる街」を見極める視点
では、将来的に評価が高まっていく可能性のあるエリアを、どのように見極めればよいのでしょうか。過去の事例を踏まえると、いくつかの共通する要件が浮かび上がります。
- 大規模な再開発計画があり、今後進化していくエリアか
- 新駅の開業や既存路線の利便性向上が予定されているエリアか
- 大企業のオフィス進出や本社機能の移転があるエリアか
- それらに伴う人口流入が実際に起きているか
これらの動きが重なるエリアは、将来的に新たな都心として資産価値を持つ可能性があります。ただし、再開発計画や新駅の開業は、変更や遅延が生じることも珍しくありません。発表された計画をそのまま将来の確定情報として受け止めず、行政や鉄道会社の続報を継続的に確認する姿勢も大切です。
まとめ
公的統計が示しているのは、マンション供給は長期的な減少局面および郊外化にあり、都心の定義が変わり始めているという実態です。
これから不動産投資を検討する場合、「今の都心」と「未来の都心」の両方に目を向け、「これからも選ばれる街」の視点で資産価値や先行型利益を狙った物件選びをすることが重要です。
供給戸数や人気エリアのランキングは、あくまで市場の一断面を示す参考情報です。将来の資産価値を保証するものではないため、個別の物件を検討する際は、最新のデータや専門家への確認とあわせて、複数の判断材料を組み合わせて考えることをおすすめします。
