空き家900万戸時代、それでも住宅は足りなくなる理由

日本の空き家は900万戸を突破し、過去最多を更新し続けています。総務省の住宅・土地統計調査(2023年)によると、全国の空き家は900万2千戸、総住宅数に占める空き家率は13.8%と、いずれも過去最高となりました。野村総合研究所の予測(2024年6月)では、空き家の除却や利活用が進まなければ、2043年には空き家率が約25%、およそ4軒に1軒が空き家になる見通しです。

その一方で、東京都心を中心に、住宅価格や賃料は上昇傾向が続いています。「住宅が余っている国」であるはずなのに、なぜ住宅の価格は上がり続けるのでしょうか。

本記事では、空き家900万戸という数字の実態を整理し、これからの住宅選びや投資物件選びで重要になる視点を解説します。

目次

空き家900万戸の誤解

「空き家が増える、さらに人口が減る → 不動産価値は下がっていく」。空き家900万戸というニュースから、こうしたイメージを持つ方は多いのではないでしょうか。しかし、数字の中身を見ていくと、実態はやや異なります。

総務省の住宅・土地統計調査によると、空き家900万2千戸のうち、統計上「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」と区分される、利用されていない空き家は385万6千戸です。空き家の数はこの30年間で約2倍に増えましたが、その内訳には偏りがあります。

総務省_令和5年住宅・土地統計調査_空き家率

まず、空き家は地方に多く分布しています。空き家率を都道府県別に見ると、和歌山県や徳島県など地方圏で20%を超える一方、都市部は10%台に留まっており、なかでも東京都や神奈川県などでは低い水準になっています。

さらに、空き家の多くは、建築から年数が経過した築古物件で、老朽化が進んでいる、駅から遠いなど立地が不便、設備が現在の生活水準に合わない、といった理由で、そのままでは自己利用はもちろん、賃貸利用や売却が難しいものが少なくありません。

つまり、日本で起きているのは単純な「住宅余り」ではなく、「住みたいと思える住宅の不足」です。統計上の住宅数は足りていても、現代のニーズに合う「使える住宅」は、むしろ限られているのが実態といえるでしょう。

【出典】令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(総務省統計局):https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/tyousake.html

「安心」がキーワードになる住宅選び

「使える住宅」の条件も、時代とともに変化しています。近年、その中心に浮上しているのが「安心して暮らせるかどうか」という視点です。

背景には、社会情勢の変化があります。いわゆる「闇バイト」による強盗事件や特殊詐欺が相次ぎ、一般の住宅が犯罪のターゲットになるケースが報じられるようになりました。警察庁も、SNSを通じた犯罪実行者の募集について繰り返し注意喚起を行っています。また、管理されていない空き家が、犯罪の拠点などに悪用される事例も指摘されています。

こうしたなかで、住宅選びの基準も変わり始めています。従来は、駅からの距離などの利便性、広さや間取り、家賃・価格が主な判断材料でした。
今後はそれらに加えて、オートロックや防犯カメラといった防犯設備、管理体制や「周囲の目」があるか、トラブル時に頼れる管理会社の対応力があるか、といった点が重視されるようになるでしょう。

住まいに求められる価値は、「住めればよい」から「安心して暮らせる」へと変化しているのです。

【参考】いわゆる「闇バイト」の危険性について(警察庁):https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/yamibaito/hanzaishaboshu.html

「管理」が住宅価値を左右する

「安心して暮らせる住宅」を支えているのは、日々の管理です。今後は、管理の質そのものが住宅の価値を左右する時代になると考えられます。

防犯の観点から見ると、管理会社による定期的な巡回や清掃、共用部の照明や防犯設備の維持、計画的な修繕、居住者からの相談への対応などは、いずれも「犯罪を寄せつけにくい環境づくり」につながります。エントランスや共用部が整然と保たれているマンションなどは、外部から見ても「管理の目が行き届いている」ことが伝わり、それ自体が防犯効果を持つといわれます。

また、ライフスタイルや価値観の多様化が進むなか、建物内のルールの周知や入居者間のコミュニケーションを支える管理会社の役割も大きくなっています。多様な入居者が安心して快適に暮らせる体制があるかどうかも、これからの住宅の価値を左右する要素といえます。

反対に、市場から選ばれにくくなるのは、空き家として放置された一戸建て、管理組合や管理会社が機能していない管理不全のマンションやアパート、防犯性の低い物件、老朽化が進んだ物件です。
野村総合研究所の予測では、腐朽・破損のある一戸建ての空き家は2043年に165万戸と、2023年(82万戸)の2倍以上に増える見通しであり、管理されない住宅は今後さらに増えていくと見込まれます。
こうした物件は、住み手からも借り手からも敬遠され、資産価値の面でも厳しい評価を受けやすくなります。

立地や間取りといった「変えられない条件」に加えて、管理という「維持されるべき条件」が満たされているか。「管理」が価値になる時代が、すでに始まっているといえるでしょう。

【出典】2043年の空き家率は約25%まで上昇する見通し(野村総合研究所):https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/20240613_1.html

住宅市場は二極化する

ここまで見てきた変化を整理すると、住宅市場の行き先が見えてきます。それは、選ばれる住宅と選ばれない住宅の「二極化」です。

一方、選ばれない住宅は、空き家化した物件や管理不全の物件、防犯性の低い物件です。人口減少が進むエリアでは、こうした住宅の買い手や借り手を見つけることは、今後さらに難しくなるでしょう。

その結果、「空き家は増えても、良質な住宅ストックはむしろ減っていく」という現象が起こります。統計上の住宅数と、実際に人々が住みたいと思う住宅の数は、これからますます乖離していくと予想されます。

冒頭の問い、「住宅が余っている国で、なぜ価格が上がるのか」の答えの大きな一つが、ここにあります。
建築費の高騰や都心部の新規供給の限られやすさも価格を押し上げていますが、その根底にあるのは「住みたいと思える住宅」への需要の集中です。

まとめ

空き家900万戸・空き家率13.8%という数字だけを見ると、日本は「住宅余り」の時代に入ったように見えます。しかし実際に不足しているのは、単に「住める住宅」ではなく、「安心して暮らせる住宅」です。

空き家の多くは、地方に立地する築古・駅遠の物件であり、都市部で需要の高い住宅とは別物です。そして、防犯意識の高まりやコミュニティの変化を背景に、住宅選びの基準は利便性や間取りだけでなく、防犯性や管理品質へと広がりつつあります。

今後の不動産の価値は、立地や間取りといった従来の条件に加えて、防犯性や管理の質によって左右される見通しです。住まい選びや資産形成にあたっては、「その住宅は10年後、20年後も選ばれ続けるか」という視点を持つことが、これまで以上に重要になるでしょう。

不動産価値の二極化は、住宅購入を考える方だけでなく、不動産投資を検討している方にも役立つ視点ですので、ぜひ本記事を参考にしてみてください。

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この記事の著者

時代に合った不動産投資を、具体的な事例やノウハウを元にリアルに情報発信している「スクエア編集部」。 40年以上、物件開発から賃貸・建物管理、仲介を行ってきた老舗グループ企業による運営の下、読者に確かな不動産投資を推奨すべく活動しています。

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