不動産投資ニュース

首都圏の投資マンションの販売戸数の推移を読み解く

ここ数年、不動産投資はかなり活況を帯びてきています。ワンルームマンション投資セミナーも多く開催されており、また参加者数も増えているようです。

バブル期ごろはワンルームマンション 投資と言えば、給与の高い専門職(医師、歯科医、弁護士)の方が行うというイメージ でしたが、今では企業に勤めるサラリーマンはもちろん、「周りの友人知人が、投資用のワンルームマンションを買ったので、私も興味を持って…」というOLの方々も増えているようです。
私も時折、メディア主催の「マンション投資セミナー」等に講師として呼んでいただきますが、参加者の顔ぶれの多様さに驚きます。20代の男性、女性から、夫婦で参加されている方もいれば、ご年配の方々まで、多くの方が興味を持って、熱心に講演を聞いてくださいます。
そして、講演で煽っている訳ではないのですが、その後多くの方が、ワンルームマンション投資を始めているようです。

そんな、活況が続く投資マンションですが、どれくらい発売されているのでしょうか?

図Aは不動産経済研究所「首都圏投資マンション市場動向」から作成した、1988年~2016年までの投資マンションの年別の発売戸数をグラフ化したものです。これを見ると、不動産市況の盛り上がり、あるいは公示地価の動きと投資マンションの発売戸数は、類似しています。

1980年代後半のバブル期は地価が高騰し、不動産価格は急上昇しました。この時期にも多くの投資用マンションが建てられていますが、最も多くの投資用マンションが発売された時期は、2002年~2007年にかけてとなっています。企業によるオフバランス化が進み、使っていない不動産・土地は売却するという「持たざる経営」がもてはやされた時期で、多くの売り土地が出ました。そこに、多くの居住用(実需)マンションが建ちました。首都圏でマンションが10万戸以上建てられた年が続いたころです。
この間に投資用のマンションも多く建てられました(10万戸に含まれています)。8,000~10,000戸の投資用マンションが建てられていますので、首都圏で建てられたマンションの10%前後は投資マンションだった計算になります。 

この時期、投資用マンションに積極的に融資する金融機関が増えました。3%程度の金利で今まで購入できなかったような、年収の500万円前後のサラリーマンや、すでにたくさんの投資用マンションを持っていて他の金融機関で断られた方が、購入ができるようになりました。その金融機関の多くがアメリカの大手証券会社の出資で設立されており、リーマンショック以降、ほとんどが撤退してしまい、あくまで一過性の市場となってしまいました。

しかし、地価の高騰により、適切な土地が仕入れられなくなったミニバブル期(2005年~2008年)後半には発売戸数が減ります。そこに、リーマンショックの追い打ちがあり、2009年~2010年頃は半減します。この2002年~2008年頃に建てられた投資用マンション(主にワンルームマンション) は現在、築10~15年の物件で、中古ワンルーム市場で多く出回っています。

投資用マンションは2011年頃から徐々に発売が増えます。その後、5,000~7,000戸で推移しています。不動産市況の盛り上がりは、2002年~2007年に比べて現在の方が長く 続いており、また投資マンションを購入する方は増えていますが、物件数はさほど増えていないというのが現状です。旺盛な需要に対して供給はそこまで追いついていないため、リーマンショック前に比べ堅調といえます。

今後のマンション需要

「新築ワンルームマンションが、即完売」というニュースを時折目にしますが、需給のバランスを考えると、真っ当なことかもしれません。
オリンピックを前にしてバブルではないか言われることもありますが、バブル経済とはその経済の裏付けが説明できないことが特徴ですが、こうした投資マンション市況は需要に裏付けられた伸びを見せており、 活況が続くように思えます。
さらにインフラ整備や再開発によって東京都心は生まれ変わろうとしており、2027年のリニア新幹線開業、2045年(2037年に前倒しの案もある)大阪まで延伸と大きな投資も継続して行われるため、東京都心の魅力はより一層進み、投資用マンションの需要は今後も続くと思われます。

不動産エコノミスト
一般社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産エコノミスト 吉崎 誠二

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学博士前期課程修了。 (株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て 現職. 不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。