サブスク全盛時代に、なぜ不動産は「所有」した方がよいのか

音楽はストリーミングサービス、映画は定額動画配信サービス、車はカーシェア、他にも家具や服の定額レンタルサービスなどが普及し、今や「モノ」は所有せず、必要なときだけ利用する時代になりました。
矢野経済研究所の調査によると、国内BtoCサブスクリプションサービス市場(7分野計)は2023年度に9,430億3,000万円規模まで拡大しており、2025年度の集計では約1兆円規模に達する見込みです。

しかし、「所有しない時代」にあっても、不動産は依然として主要な保有資産の一つであり続けています。国税庁の相続税申告事績によれば、相続財産に占める土地・家屋の割合は現金・預貯金と並んで大きく、資産の中核であり続けていることがうかがえます。
様々なモノがサブスクやシェアに置き換わるなかで、なぜ不動産だけは「所有」され続けるのでしょうか。

本記事では、「所有」と「利用」の違いを整理しながら、不動産を持つことの意義を改めて考えます。

この記事を監修した人

清水 剛 (しみず つよし)
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
FP(ファイナンシャル・プランニング技能士)2級

プロフィール
不動産デベロッパーにて不動産投資業界に26年従事。国内で16年、海外市場では10年にわたり、台湾・シンガポール・香港などの投資家へ日本の不動産販売・販促を手がける。国内外の投資家ニーズに精通し、メディア出演や20回超のセミナー登壇を通じ、初心者から経験者まで幅広い層へ不動産投資の実践的な知見を発信している。

メディア出演歴
BS12(トゥエルビ) / 日経CNBC

目次

なぜ人は「所有」をやめたのか

まず、なぜ多くのモノが「所有」から「利用」へと置き換わってきたのかを整理します

所有には「見えないコスト」がかかる

モノを所有すると、購入価格に加えて、維持費や保管場所の確保、故障時の修理費用など、さまざまなコストがかかります。さらに、家電やITガジェット、自動車のように技術の進化が速い分野では、数年ごとの買い替えや更新も避けられません。所有とは、便利さと引き換えに、このような継続的な費用の負担が生じます。

「持った瞬間から価値が下がる」というリスク

所有にはもう一つ、見過ごせないリスクがあります。それは、モノの資産価値が時間とともに目減りしてしまうことです。

例えば自動車は、新車で購入した瞬間から資産価値は下がり始め、一般的には5年で購入価格の40%~50%値下がるといわれます。パソコンやスマートフォンといった家電製品も、性能の進化とともに市場価値が大きく下がるのが一般的です。
「買った瞬間から目減りしてしまう」資産を持ち続けることは、資産形成の観点では必ずしも合理的とはいえません。

下記は国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数(器具・備品)」から主要な家庭用家電の耐用年数を抜粋した一覧です。大半の耐用年数は4年~6年に収まっており、モノの資産価値は思うほど長くないことが分かります。

主要資産の法定耐用年数比較ガイド

【出典】国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf

サブスクは「必要な分だけ」を実現する

こうした背景から、多くの人が「必要なときに、必要な分だけ利用する」という選択をするようになりました。
月額料金さえ払えば、膨大な音楽ライブラリや映画が楽しめ、車も使いたいときだけ借りられます。所有に伴う初期費用や維持コスト、資産価値の下落リスクを負わずに、利便性だけを享受できる。これが、サブスクやシェアリングサービスが急速に広がった理由といえるでしょう。

不動産は「消費財」ではない

一方で、不動産は他の多くのモノと性質が大きく異なるのは、以下のような複数の資産性をあわせ持っているからです。

  • 土地という有限な資産(供給が増えない)
  • 住む・使うという利用価値のある建物資産
  • 賃貸に出すことで賃料収入を生み出せる収益資産

サブスクやレンタルは、契約を解約すればそこで終わりです。利便性という価値は得られますが、手元には何も残りません。
一方、不動産を所有すれば、住む(使う)という利用価値に加えて、賃料収入や売却益が期待でき、相続財産として次の世代へ引き継ぐことができる長期的な資産性も持ち合わせています。
「利用して終わり」ではなく、「利用しながら資産として積み上げる」ことができるのが、不動産ならではの特徴です。

もっとも、不動産の所有にもコストはかかります。固定資産税・都市計画税、管理や修繕費用、設備機器の修繕や交換費用などは、保有している限り継続的に発生します。
また、土地は経年で減価償却せず、建物部分も自動車や家電と比べ、耐用年数は長期となっています。もちろん、不動産は「所有すれば自動的に資産が増える」ものではなく、こうしたコストを上回るリターンを見込めるかどうかを見極めて物件を選ぶことが前提になります。

サブスクやレンタルサービスと不動産所有を簡易的に比較すると、次のようになります。

サブスク・レンタルと所有(不動産など)の比較表

利用価値のみを重視するサブスクに対し、不動産は利用価値に加えて、資産価値・収益性・相続面でのメリットまでを兼ね備えられる点が大きな違いです。ただし、これは立地選定や適切な管理があってこそ成り立つものであり、不動産を持てばすべてが有益な資産形成となるわけではないという点は留意しましょう。

インフレ時代に見直される「所有」の価値

近年の物価上昇も、「所有」の価値を見直すきっかけとなっています。

総務省の消費者物価指数によると、2026年5月分の全国CPI(生鮮食品を除く総合)は前年比プラス1.4%となり、物価の上昇基調が続いています。これは、現金の価値が実質的に目減りしているといえます。

【出典】2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)5月分(総務省):https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01toukei08_01000345.html

一方、賃貸住宅市場では、住宅価格の高騰を背景に賃貸需要が底堅く推移し、家賃相場の上昇が続いています。アットホームの調査では、2026年3月の全国主要都市における募集家賃が、全13エリア・全面積帯で前年同月を上回り、2015年1月の調査開始以来、初めての結果となりました。

【出典】2026年3月 全国主要都市の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向(アットホーム株式会社):https://www.athome.co.jp/corporate/news/data/market/chintai-yachin-202603/

サブスクの月額料金も、物価上昇にあわせて値上げされる傾向があります。しかし、その料金をいくら払い続けても、手元に資産として残るものはありません。

一方、不動産を所有していれば、家賃収入や資産価値の上昇という形で、インフレの影響をメリットとして享受できる可能性があります。ローンを組んで不動産を取得し、家賃収入を返済原資にしながら資産形成を進めるという方法も、選択肢の一つとして注目されています。

もっとも、不動産の資産価値や家賃相場は将来にわたって上昇が保証されているわけではなく、金利環境や市況によって変動しうる点は踏まえておく必要があります。
ローンを活用する場合は、空室や家賃下落が続けば返済原資を自己資金で補う必要が生じる可能性があること、また金利上昇局面では返済負担が増えるリスクがあることにも注意が必要ですが、選んだ物件や立地次第で、希少価値の高まりが期待できます。

まとめ

音楽や映像、移動手段など、多くのモノが「所有」から「利用」へと置き換わっています。国内のサブスクリプション市場は年々拡大しており、この流れは今後も続くと考えられます。

しかし、不動産だけは事情が異なります。土地という有限な資産、利用価値のある建物資産、賃料を生み出す収益資産という複数の資産性をあわせ持つ不動産は、「利用して終わり」のサブスクとは違い、「所有することで資産を積み上げる」ことができます。
加えて、物価上昇が続くインフレ局面では、現金や預金と対照的に、実物資産としての不動産を保有する意味も高まります。

「所有しない時代」とは、裏を返せば「本当に価値のあるものだけを、あえて所有する時代」なのかもしれません。サブスクでは代替できない資産性を備えた不動産は、今後も資産形成の選択肢の一つとして選ばれ続けると考えられます。

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この記事の著者

時代に合った不動産投資を、具体的な事例やノウハウを元にリアルに情報発信している「スクエア編集部」。 40年以上、物件開発から賃貸・建物管理、仲介を行ってきた老舗グループ企業による運営の下、読者に確かな不動産投資を推奨すべく活動しています。

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