不動産エコノミストが語る 不動産投資の必須思考

投資用マンションの耐震構造について、ベストな選択は?

政府が「30年以内に7割の確率で起こる」と発表している首都直下型地震。
この首都直下型地震とは、東京都、茨城県、千葉県、埼玉県、神奈川県、山梨県を含む南関東地域のどこかを震源として起こるマグニチュード7クラスの大規模な内陸で起こる地震のことを指すようです。

マグニチュード8くらいだった関東大震災からちょうど100年が経ちますが、それより一回り小さいマグニチュード7クラスの地震は、いつおこるか分かりませんが、「そう遠くない未来に起こる可能性が高い」ようです。
このような政府の発表が度々報道されると、投資用のマンションを購入する際には、「大きな地震が襲っても倒壊の心配のない物件を購入したい」と思うのは当然のことでしょう。
今回は、マンションの耐震性を強硬にする構造の種別とその特徴、そしてそれらが利回りにどう影響するのかについて解説します。

建築基準法と耐震性を向上させる構造

耐震基準については、建築基準法に基づき、建物の耐震性の定めがあります。
現行の建築基準法は1981年に制定されたものですが、耐震基準に関しては2000年に定められた、いわゆる「2000年基準」が求められます。
建築物の工法には、主なもので、木造、軽量鉄骨造、S造、RC造、SRC造がありますが、ある程度の高さの建物ではRC造・SRC造で建築するのが一般的です。

一般的なマンションで採用されるRC造やSRC造では、居住者が多いことに加えて、もし倒壊などすれば大惨事となりますので、以下にお伝えするような、耐震性を高める構造を採用するのが一般的です。

マンションやビルで採用される耐震性を高める建築物の構造には、内部での揺れの感じが少ない順に、「免震構造」、「制震構造」、「耐震構造」と呼ばれる建築構造があります。

免震構造は安心だが、費用がかかる

東日本大震災の発生から数カ月経ったある日、私はある教授(工学博士)の話を聞いていました。
その時、余震と思われる軽い揺れを感じて、「ドキッと」しました。

その時、教授は、「このビルは、免震構造で建築されています。いま現在の技術では最も地震に対応できる構造で、しかも新しいビルです。もし、このビルに万が一のことがあったら、それはまさに未曾有の地震でしょう。そんなことは考えられないので、気にせずに話を進めます。」と講演を続けました。

免震構造は、建物と地面のあいだに、免震部材(積層ゴムやダンパー)を設置して、建物が受ける地震のエネルギーを吸収することで、地面の揺れを遮断します。高層ビルやタワーマンションで採用されることが多いようです。
かつて、タワーマンションの39階に住んでいたしたが、震度3クラスの揺れが起こった時に、館内一斉アナウンスが流れ、エレベーターは止まりましたが、揺れは全く感じませんでした。
「何があっただろう?」という感じでした。
しかし、コストがかなり高くなるため、大規模マンション、大規模ビルで採用される傾向にあります(案分で1戸あたりの費用が抑えられるため)。

ただし、最も揺れを抑えることはできますが、費用はかなりかかります。
また、建物が経っていない場所(空地)を多く必要となりますので、敷地に対する建物利用率が低くなり、この点からも投資利回りが悪くなります。
敷地が大きく、高層建築、戸数が多い、というような条件がそろう必要があります。平均30戸程度の投資用マンションでは、利回りの観点から、採用は少ない傾向にあります。

制震構造

制震構造では、建物の柱や梁の主要構造部材へショックアブソーバーのような制震部材(=制震装置)を設置して、地震のエネルギーをその装置が吸収することで、揺れを抑えます。また、主要構造部材の損傷を防ぐことにもなります。


耐震構造とコスト感

最後に、耐震構造は、他の2つに比べて、揺れは大きくなります。
ご承知のように、地震発生時の揺れは、建物内部に伝わり、階が上がるほど揺れ幅(横揺れ時)が大きくなります。

耐震構造は、壁や柱を強固な仕様にしたり、補強材を入れたりする事で建物自体の強さで地震に対抗する構造で、他の2つに比べて、コストを抑えることができます。
また、コストに合わせて、補強箇所を設定できます。高さや、建物サイズに合わせて、コスト感を合わせることができます。
そのため、地震の揺れの影響が出にくい低層マンション・低層ビルなどで用いられています。
10階~15階程度の(よくある高さの)マンションなどでは、耐震構造の採用が多いようです。

こうしたことから、それほど高さのない投資用マンションなどでは、費用(=利回りに直結)と効果の面から耐震構造が採用されていることが多いようです。

不動産エコノミスト
一般社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産エコノミスト 吉崎 誠二

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学博士前期課程修了。 (株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て 現職. 不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。