不動産エコノミストが語る 不動産投資の必須思考

回復がより鮮明となった首都圏の地価! 22年地価公示を読み解く

2022年(令和4年)の地価公示が3月22日に国土交通省より発表されました。
地価公示は、国土交通省の審議会の1つである土地鑑定委員会が地価公示法に基づき、全国26000地点(令和4年分)の土地を2人以上の不動産鑑定士に価格時点を1月1日とした土地価格を鑑定させた結果をまとめ、国土交通省が公表しているもので、1970年(昭和45年)から行われています。

22年の地価公示は、「新型コロナウイルスによる経済に与える影響がだいぶん少なくなってきている中で、「地価はどれくらい回復しているのか?」に注目されました。

全国の状況

令和4年分地価公示の全国の概要からお伝えします。

公示地価全国平均では、全用途(全用途=住宅地・商業地・工業地)平均で+0.6%、住宅地で+0.5%、商業地で+0.4%といずれもプラスとなりました。
昨年(2021年)は、全国ではすべての用途でマイナスでしたので、2年ぶりにプラスになったということになります。
20年までの5年間はずっとプラスでしたが、21年は、新型コロナウイルスの影響が大きく、6年ぶりにマイナスとなりました。そこから1年でプラス圏に戻ったことになります。

21年の地価公示を振り返ると、三大都市圏(東京圏、名古屋圏、大阪圏)はいずれもマイナス、地方圏全体でもマイナスとなっていました。
しかし、22年は、三大都市圏すべて、さらに、地方圏全体も1年でプラス圏に戻りました(カテゴリーでは唯一、地方4市を除くその他地方圏のみ-0.1%でした)。
全国の標準地(=調査地)は26000(うち7地点は原発事故の影響で中止中)で、そのうち36%が下落地点(昨年は58%)、横ばいが21%(昨年は22%)で、上昇地点は43%(昨年は19%)と、大きく回復した結果になりました。

3大都市圏の状況

3大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏)では、全用途は+0.7%(前年は-0.7%)、住宅地は+0.5%(前年は-0.6%)、商業地は+0.7%(前年は-1.3%)となりました。
3大都市圏全体ではいずれも昨年のマイナスからプラスに転じました。
住宅地では3大都市すべてが2年ぶりにプラスに転じ、商業地においては東京圏・名古屋圏はプラスに、大阪圏は横ばい(±0)となりました。

大都市部の住宅地では、中心部の希少性の高いエリアや利便性の高いエリアでは上昇が続いています。
しかし、下記グラフが示すとおり、コロナショック前の2020年に戻してはいませんが、いまの状況では来年には戻りそうです。
一方、商業地では国内外の観光・ビジネス訪問(出張など)需要の回復が遅れていることもあり、マイナスからプラスには転じましたが、まだ完全回復には至っていません。
ほぼコロナショック前にもどった住宅地と、回復にはまだ遠い商業地にわかれた格好です。

東京圏の状況

地価公示における3大都市圏の名称は、東京圏、大阪圏、名古屋圏となっています。

このうち東京圏は東京都区部、多摩地区、横浜市・川崎市・相模原市、千葉市、船橋市、市川市、浦安市、さいたま市、川越市、川口市、越谷市、取手市、守屋市などが該当します。
首都圏で東京都心への通勤圏内といったエリアです。

東京圏では、全用途平均で+0.8%(前年は-0.5%)、住宅地は+0.6%(前年は-0.5%)、商業地は+0.7%(前年は-1.0%)となりました。上昇はいずれも2年ぶりとなります。

住宅地では、東京都+1.0%(前年は-0.6%)、23区全体では+1.5%で昨年の-0.5%からプラスに転じ、全23区で変動率がプラスとなりました。
上昇率が最も高かったのは中央区で+2.9%(前年は-0.8%)で、続いて豊島区+2.6%の(前年は-0.6%)、2.5%の文京区(前年は-0.7%)がこれに続いています。

地区別の変動率をみると、都心5区が+2.2%(前年-0.3%)、その他18区では1.4%(前年は-0.5%)となりました。
また、港区や目黒区では上昇幅が拡大しました。23区内の、特にその中心的な区の住宅地の強さがうかがえます。

ちなみに、全国住宅地の地価最高額のベスト5のうち4つが港区、1つが千代田区となっています。
埼玉県は+0.5%(前年は-0.6%)、神奈川県は+0.2%(前年は-0.6%)、前年も関東圏唯一プラスだった千葉県は今年も+0.7%となりました。

商業地について簡単に触れておくと、住宅地に比べて回復が遅れています。都区部では23区のうち、20区が上昇に転じましたが、中央区銀座や新宿の中心部では依然マイナスとなっています。
都心と呼ばれる地域でも住宅地と商業地でだいぶ差がつきました。

23年への見通し

最後に23年への見通しについてお伝えします。

まず、全国的に回復基調にあります。毎年9月に発表される都道府県地価(価格時点は7月)と重なる地点(同一地点)の公示地価を見ると、21年前半の上昇率よりも、後半(7月以降)の上昇率が高いところがほとんどです。
つまり、今年の上昇分は21年後半の寄与が高かったということになります。

つまり、地価は21年の後半以降に大きく回復し、現在も右肩上がりの状態にあるということです。
金利の動向、恒常的なインフレの可能性などにより、23年の地価公示の見込みはぶれる可能性もありますが、現在の状況だけでみれば、23年の地価公示は今年以上の伸びを示すものと思われます。

特に東京都心部の住宅地は、新築マンション・中古マンションとも過去最高水準の単価で取引されており、この熱狂はしばらく続くものと思われます。
また、投資用マンション価格も上昇が続いています。ここに円安基調が続けば海外マネーの流入が増える事は確実で、これらマンション価格の上昇は避けられないでしょう。

という状況を考えれば、(これから年末までに大きな災害等がないという前提でいえば)、東京都心部、また東京圏の住宅地における23年の地価公示は今年以上の伸び率を示すことは、ほぼ確実といっていいと思います。

不動産エコノミスト
一般社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産エコノミスト 吉崎 誠二

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学博士前期課程修了。 (株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て 現職. 不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。