不動産エコノミストが語る 不動産投資の必須思考

住宅ローン減税の改正。40㎡以上のマンションにも適応でさらに人気が出る?

目次

―住宅ローン減税について
―住宅ローン減税の適用条件
―改正の内容
―40㎡以上に緩和されたことで、人気が出るコンパクトサイズマンション

延長が望まれていた「住宅ローン減税」ですが、このたび21年12月10日に22年分の与党による税制改正大綱がまとまり、22年以降も住宅ローン減税が4年間(25年末入居まで)延長されることになりました。

また、この度の改正では、50㎡以上の物件に適用されていた「住宅ローン減税」という条件が付くものの、40㎡以上に緩和されたことも話題になりました。(注:正式には通常国会での決議後ですが、与党が過半数を占めているため、次年度以降も継続が事実上決まりました。)
これにより、資産性の高い好立地マンションでコンパクトサイズの物件はさらに人気が出るものと思われます。最後までお読み頂くとその理由が分かります。

住宅ローン減税について

住宅ローン減税は、自宅用の住宅取得の際に金融機関から借りた住宅ローンの利息負担を軽減するため、期間内における年末のローン残高の一定割合を所得税から控除(減額)する制度です。

国による「住宅購入支援サポート」制度の歴史は古く、1978年にスタートしています。
現行制度の、「住宅ローン控除」は、所得税が控除される制度ため、その恩恵はかなり大きいと思われます。

「住宅ローン減税」は、住宅取得の促進のために導入されている実質減税です。
住宅に関わる産業は裾野が広く日本経済の活性化の活性化につながること、また近年2回増税が行われた消費税増税の際には「景気が冷え込まないための支援策と」して、また業界団体からの要望が根強いこと、などから長くこの制度が導入されていると思われます。
しかし、一方で昨今のように低金利が続く中では、控除が利息分以上になる例も見られ、不公平感が言われていました。

今回の税制改正大綱で、住宅ローン減税について、改正が行われました。
具体的には、控除率、控除期間等を見直しや年収制限の変更がおこなわれ、かつ環境性能等に応じた借入限度額の上乗せ措置等が講じられます。

(注:税については個人の状況により適用できないなどがあります。詳細は専門家に確認していただけますようお願い致します。)

住宅ローン減税適用の要件

以下の条件を満たせば、住宅ローン減税を適用することができます。

① 住宅建物の延べ床面積が50㎡以上であること。
ただし、40㎡以上の場合もOKの場合があります(後述します)

② 適用を受ける年度の合計所得が2000万円以下であること
→21年までは3000万円でした。
③ 新築あるいは取得した日から6カ月以内に入居し、該当年の12月31日まで居住していること
④ 10年以上の住宅ローンを組んでいること

住宅ローン減税の改正内容

・控除率は、年末時点ローン残高の0.7%が控除されます。
→昨年までは、1.0%でした。

・控除期間は現行の原則10年が原則13年となります。
→新築住宅や買い取り再販物件は原則13年(ただし2024年入居以降の場合は10年)。既存住宅(中古物件)は原則10年。

・所得要件は3000万円以下が2000万円以下になり、これに関しては厳しくなりました。

40㎡以上に緩和されたことで、人気が出るコンパクトサイズマンション

住宅ローン減税の要件として、これまでは原則床面積が50㎡以上でした。
しかし、新築住宅の場合、2023年までに建築確認を行った物件であれば、40㎡以上でもOKとなりました。ただし、この場合の所得要件は1,000万円以下となります。
これにより、ここ数年増えてきている都心一等地に建設されているような広めの1ルームマンションや1LDK物件なども要件を満たす物件が出てくるものと思われます。

このサイズの物件はこれまで、投資用マンションのイメージが強かったわけですが、近年は資産性が高いと考える方が増え、またカップルで暮らすにはちょうどいい広さであり、自宅用に購入する方も増えてきました。
住宅ローン減税の期間(現行制度で13年)が過ぎ(自宅用として住んでいないと住宅ローン減税は適用されません)、またちょうどライフスタイルが変化するなどした場合は、賃貸物件として貸すこともできます。
住宅ローン減税の適用範囲が40㎡以上になったことにより、こうしたサイズで資産価値が下がりにくい好立地マンションは、今後さらに人気が出てくるものと思われます。

不動産エコノミスト
一般社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産エコノミスト 吉崎 誠二

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学博士前期課程修了。 (株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て 現職. 不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。