不動産エコノミストが語る 不動産投資の必須思考

21年最新路線価と区分マンションの価値について

目次

―路線価とは?
―区分マンションの価値と路線価について
―全国平均6年ぶりの下落
―路線価の修正はあるのか?

7月1日に2021年分の路線価が国税庁より発表されました。相続税や贈与税の課税基準を算出することを目的とした価格です。

路線価とは

路線価は、国税庁が発表する「税」を算出する際の基準となる土地価格で、価格時点は、公示地価と同じく1月1日時点となります。

路線価は、細かく言えば、「相続税路線価」と「固定資産税路線価」に分かれます。
土地活用や賃貸住宅経営をされている方にはとても関心の高い相続税や贈与税、また区分マンションはもちろん不動産を所有すれば納める必要のある固定資産税の算定基準となるものです。

公示地価をもとに算出されており、「相続税路線価」は概ね公示地価の80%(税務署が算定)、「固定資産税路線価」(市町村が算定)は概ね70%が目安とされています。
この度(7月1日)発表された路線価は「相続税路線価」で、「固定資産税路線価」は3月1日(3年ごとの改定。つまり3年ごとの発表)に発表されます。
メディアの報道などで、一般的に「路線価」といえば、7月に発表される「相続税路線価」を指すことが多いようです。

今回7月発表の路線価(相続税路線価)は、2021年1月1日以降に発生した相続や贈与において、相続税額や贈与税額算定に影響する重要な数字となります。
年単位で路線価等は変わりますが、こうした税の算定基準となるのは、発生した時点の数字で、申告した時点の数字ではありませんので、注意が必要です。
また、路線価は、特定条件や奥行距離等による補正、その他その計算方式はかなり複雑ですので、専門家に相談するといいでしょう。

区分マンションの価値と路線価について

区分マンションにおける路線価(とくに、固定資産税路線価=評価額)は、実際に取引されている価格よりもだいぶん低くなります(すでに、自宅用・投資用として区分マンションを所有している方はすでにご存知かと思います)。
とくに、狭い敷地に多くの戸数がある物件、その代表がワンルームマンションですが、の場合の路線価は低くなります。
これは、マンションという不動産の価値は、そもそも1戸あたりの土地割合が少なく、その上、不動産そのものの価値というより、「利用権」の価値が大きいという考えが大きいためのようです。
逆に、ほとんど買い手のつかないような場所の不動産でも、ある程度の評価がついているものもあります。

こうして考えると、不動産の価値は、結局のところ実際の取引価格でみることが正常で、そういう意味では、「取引事例」での不動産価格の算出、あるいは「収益還元」での不動産価格の算出が適していると言えるでしょう。
投資用のワンルームマンションでは、収入を還元利回りで割った収益還元法での算出が最も実勢に合致した不動産価値と言えるでしょう。

ここからは21年分の路線価について見てみましょう。

全国平均6年ぶりの下落

21年分の路線価(標準宅地)の全国平均は前年比0・5%減と6年ぶりの下落となりました。
新型コロナウイルスの感染拡大による影響が大きく、とくに都市部商業地では、オフィスや商業系テナントの需要減少等が要因と思われます。
都道府県別でみると、東京都や大阪府は7年ぶりの下落で、全国では39都府県で下落、上昇は7道県にとなっています。前年は21都道府県で上昇していましたので、大幅に減ったことになります。

詳細は、下記サイトを検索すれば、皆さまが所有されている土地の路線価が検索できます。
https://www.rosenka.nta.go.jp/
ご参考ください。

路線価の修正はあるのか?

さて、昨年、話題となった路線価の期間中(年)の修正ですが、今年も可能性があるかもしれないことを、国税庁が示唆しています。
昨年、国税庁は、同年7~12月分について、コロナウイルスによる影響で20%を超える大幅な地価下落が見られたとして、大阪市の中心部繁華街など13地点で減額修正を行いました。21年分に関しても、地価変動等に柔軟に対応できるよう動向調査を実施するようです。

昨年の路線価の価格時点(2020年1月1日時点)以後に、新型コロナウイルスの影響が広がりました。
つまり昨年分はコロナショックの影響がなかった時点の路線価だったわけです。そのため、7月以降分の減額修正が一部地点で行われました。
しかし、今年の路線価は当然ながら新型コロナウイルスの影響が強く出ています。そのため、おそらく減額修正はないものと思われます。

不動産エコノミスト
一般社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産エコノミスト 吉崎 誠二

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学博士前期課程修了。 (株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て 現職. 不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。