不動産エコノミストが語る 不動産投資の必須思考

2021年公示地価発表! 都心の最新地価を読み解く

3月23日、21年分の公示地価が国土交通省から発表されました。

全国の様子

全用途(住宅・商業・工業)の全国平均では前年比0.5%のマイナスとなり、昨年までの5年連続のプラスから一転、6年ぶりにマイナスとなりました。
新型コロナウイルスの影響は大きく、三大都市圏(東京圏、名古屋圏、大阪圏)はいずれもマイナス、地方圏全体でもマイナスとなりました。

全国の標準地(=調査地)25693地点のうち14959地点(58%)が下落、横ばいが5771地点(22%)で、上昇地点は4963地点で19%と2割に満たないという結果になりました。
全国の住宅地はマイナス0.4%(前年はプラス0.8%)、商業地はマイナス0.8%(前年はプラス3.1%)とともにマイナスですが、商業地の落ち込みの方が住宅地に比べ圧倒的に大きくなっています。

東京都では20年の後半は回復のキザシも

公示地価と、毎年9月に発表される都道府県地価との同一地点(東京都では209地点あります)に限った公示地価では、東京都(住宅地)は年間ではマイナス0.8%でした。
これを前後半に分けると、前半はマイナス0.8%(1月1日~7月1日までの変動率)でした。
そして、後半は±0%(7月1日~21年1月1日までの変動率)となり、マイナス圏からは脱していますが、プラスにならず前半のマイナス分を後半でカバーしきれなかったため、年間でマイナスになっていると分析でいます。

しかし、20年秋以降、そして21年に入り、取引状況などをみているとだいぶ回復している様子で、21年9月に発表される都道府県地価(価格時点は7月)では、20年比でプラスになりそうな様相です。

東京中心部の状況

ワンルームマンションが多く建つ東京都区部やその周辺地域に目をやると、公示地価(住宅地)で前年比プラスなエリアは、都区部では港区と目黒区の2つ。
その他は、ほんのわずかですがマイナスとなっています。そのなかでも大きなマイナスは練馬区のマイナス0.9%でした。
周辺部では、稲城市がプラス0.7%でしたが、それ以外にマイナスではなかったのは、±ゼロの武蔵野市、府中市、調布市のみとなりました。

都心8区の状況

ワンルームマンションが多く建つ都心エリアの中でも最も多いと思われる、中央区、港区、千代田区、渋谷区、新宿区、品川区、文京区、豊島区の8区について見てみます。

ちなみに、都心3区といえば中央区、港区、千代田区であまり異論が出ないようですが、都心8区となると、中央区、港区、千代田区、渋谷区、新宿区、文京区 の6つはほぼ固定されていますが、あと2区は、品川区、目黒区、台東区、豊島区のうちの2つを入れる事が多いようです。

東京23区の住宅地はマイナス0.5%、東京都全体のマイナス0.6%とほとんど違いがありません。
都心8区のうち、プラスは港区のみでプラス0.3%、順に千代田区はマイナス0.4%、新宿区・渋谷区がマイナス0.5%、ここまでが東京23区平均と同じか上に位置しています。
以下、品川区、豊島区がマイナス0.6%、文京区マイナス0.7%、中央区はマイナス0.8%となっています。最も中心に位置する区(都心3区)の1つである中央区の下げ幅の大きさが目立ちます。

21年これからの展望

21年の公示地価だけをみると、新型コロナウイルスの影響が色濃く出ています。
すでに回復基調にあることは間違いありませんが、価格時点である20年1月と21年1月という年単位で比較するとマイナスとなるところが多くなったことは仕方ないと言えるでしょう。
しかし、実際の実需用マンションの売れ行き、投資用のマンション(区分、1棟)の売れ行きともに20年21年ともに好調が続いています。

キャップレートの推移を見ても、レジデンス投資における「期待利回り」に大きな変化は見られません。
相変わらず、城南・城東エリアでは4%を切るかどうかという状況にあります。超好立地の新築などでは、4%以下の物件も多いのが実情です。

確かに、20年4月の1回目の緊急事態宣言中は大きく落ち込みましたが、しかしその回復は早かったと言っていいでしょう。
そして、金融緩和政策が続く限りは、ワンルームマンション投資市場は、21年後半も今のような安定した状況が続くものと思われます。

不動産エコノミスト
一般社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産エコノミスト 吉崎 誠二

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学博士前期課程修了。 (株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て 現職. 不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。