不動産エコノミストが語る 不動産投資の必須思考

コロナショックの1年間で見えた「投資マンションの安定感」

目次

―新型コロナウイルスの影響が出始めて1年、この間の不動産市況が見えてきた
―社会変化に伴う不動産の価値
―不動産投資に安定感を求めるならば、住宅市場への投資
―ホテル市場の回復は遠くない。一時的な変化による不動産市況の変化
―オフィスのあり方は戻らない!構造的な変化による不動産市況の変化
―東京都区部の21年1月は過去最高の賃料!

新型コロナウイルスの影響が出始めて1年、この間の不動産市況が見えてきた

新型コロナウイルスによる感染が広まり、経済に影響が出始めてから概ね1年が経過しました。
1年が経過しましたので、この間の不動産に関するデータも多く出揃い、不動産市場がどんな状況にあるのか、あるいはこの1年間どんな状況だったのか等がクリアになってきました。
そこで見えてきたのは、不動産種別によりコロナショックの影響が大きく異なっていることでした。

社会変化に伴う不動産の価値

不動産は、個人や企業が日々それを使って、財やサービスを生産・提供したり(=オフィス、商業施設など)、家族とのだんらんを楽しむ等というの何らかの効用を得たり(=住宅など)するものです。
経済学的にいえば、「効用の対価としてお金(賃料やローン)を支払っている」ということです。

日々接するものですから、社会状況の変化が起これば、使われ方に変化が起こります。
不動産の使われ方(活かし方)に変化が起これば、「不動産から得られる収益や効用」が変化します。
例えば、田畑が広がるエリアつまり農作地として使われていたエリアに駅ができると、周辺に商業施設や住宅ができ、使われ方が変化します。
そうすると、一般的には農作地と比べて商業施設や住宅地の方が収益性が高いため、価格(地価あるいは賃料)が上昇します。こうして不動産市場が変化していきます。

不動産投資に安定感を求めるならば、住宅市場への投資

ここでの不動産市場に影響を与える「社会の変化」には、一時的な変化つまり新型コロナウイルスの影響が収束したら概ねもとに戻ることと、構造的な変化つまりもう戻らないこと、そしてこうしたショックではあまり影響を受けないものに分ける事ができます。

これらを、順を追って説明しますが、結論を先に言えば、この1年間のデータを見る限り、投資マンション市場を含め住宅市場は「影響をあまり受けていない」といえます。

ホテル市場の回復は遠くない。一時的な変化による不動産市況の変化

首都圏ではいまだ緊急事態宣言下にあり(執筆時3月1日)、都市部の多くの飲食店は営業時間を短出しいます。「STAY HOME」のもとで、夜の街は静まり返っています。
飲食・商業施設等は現在厳しい状況ですが、影響がおさまると、比較的早く回復するものと思われます。つまり、一時的な変化といえます。
同様に、ホテルや観光関連施設も厳しい状況ですが、こちらも比較的早くというよりも、溜まっていた需要が一気に噴出して堰を切ったように急回復すると思われます。
このところのANAやJAL株の急上昇、ホテル関連JREITの急上昇からも多くの投資家がそう予測しているものと思われます。
現在、商業・飲食関連施設やホテル等の不動産市況は、良くない状況ですが、半年もすれば少しずつ回復するものと思われます。

オフィスのあり方は戻らない!構造的な変化による不動産市況の変化

次に、新型コロナウイルスの影響がもたらした、構造的な変化(=つまりもとには戻らないと思われる)変化による不動産市況の変化についてです。
新型コロナウイルスにおる感染の広まりに伴う政府等からの要請により、日本全体に在宅勤務(=リモートワーク)が広まり、WEBなどを使った会議などが広く一般化しました。


業種等によりこうした仕組みが難しいワークもありますが、「新型コロナウイルスの影響がおさまっても、こうした勤務形態を続けていく」とアンケート等に回答している企業が多いようです。
財やサービスの生産拠点であるオフィスのあり方に構造的な変化がもたらされています。オフィスの移転・縮小などが進んでいますが、これはもう戻らないことだと思われます。
全国的にオフィス空室率の上昇はすでに始まっており、賃料の下落も見られます。これからのオフィス市場は、新たな展開を求められそうです。

同様に、「買い物」のあり方も変化しています。新型コロナウイルスの影響によりEC(ネット通販)を使った買い物が一層普及しました。
こうした流れの中で、物流関連施設は今後もさらに活況が続くものと思われます。郊外型の商業施設(例えば、ショッピングセンターなど)は今後も比較的好調だと思われますが、都市部の小売商業施設は、厳しくなるものと思われます。

東京都区部の21年1月は過去最高の賃料!

一方、新型コロナウイルスの影響があまり見られなかったのが、賃貸住宅市場です。
そもそも、「住まい」はこうした影響を受けにくいものですが、今回の新型コロナウイルスのような極めて大きなインパクトをもたらす出来事が起こっても、大きな変化は見られませんでした。
 住宅賃料は、都市部では、やや上昇基調が続いています。「東京都区部では21年1月は過去最高の住宅賃料(㎡単価)だった」という一部報道もありました。
データこの傾向は、まだまだ続くものと思われます。

需要に安定感のあるのが賃貸住宅投資(=賃貸住宅経営)の特徴であることは、本連載でも何度か述べてきました。投資においては、「安定感があるかどうか」、は重要な視点です。
今回の新型コロナウイルスの広まりという大きな出来事を経て、さらにマンション投資の安定感が浮き彫りになったと言えるでしょう。

不動産エコノミスト
一般社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産エコノミスト 吉崎 誠二

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学博士前期課程修了。 (株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て 現職. 不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。