不動産エコノミストが語る 不動産投資の必須思考

2020年後半の不動産市況・金利等の見通し(2020/7/1)

―不動産市況に影響を与える要因とは?
―建築費とストック数の今後
―ムードは読めないがいい物件に巡り合う可能性が高まる

2020年も7月を迎え、後半に入りました。今年も残り半分となりました。
2020年の前半、我々は新型コロナウイルスによる影響で、全世界的な経済停滞を体験しましたが、このところは経済が再開し街にも活気が戻ってきました。

2020年上期の不動産市況は、2月まではそれなりに好調でしたが、3月に入り新型コロナウイルスによる自粛ムードの広がりとともに、ブレーキがかかりました。
しかし、6月に入ると、不動産市況も徐々にもとに戻り始めています。
また、株式市場に目をやると、6月上旬には日経平均が23000円台に回復、現在(7月1日時点では)22000円台をキープしており、おおむね新型コロナウイルスの影響が出る前の水準に戻しています。

こうしたことをふまえて、ここからは2020年下期の不動産市況を予測してみます。

不動産市況に影響を与える要因とは

不動産市況に影響を与えるものは、「直接的なもの」と「間接的なもの」に分かれます。
直接的な要因には、金利、経済状況(株式市場、物価上昇・・)などといったファンダメンタルズに加えて、建築費、不動産ストック数、なども大きな要因となります。
また、間接的な要因としては、不動産に対するムードなどが考えられます。

金利のゆくえ

まず、もっとも大きな要因と言われているローン金利について検討してみます。

個人住宅や賃貸用物件の借入金利の動きの目安となる、10年物日本国債の動きを見てみると、直近1年では2019年9月ごろに-0.25~-0.3%とかなりの低水準でした。
その後日本国債10年物の金利はわずかに上昇し、年末年始頃は0%前後で推移しますが、今年3月に入りコロナウイルスの影響が出始めると、再び大きく下げ一時-0.2%に下がったと思うと4月には+0.1%と大きく乱高下しました。
そして、以降マイナス金利状態ではなく、プラス圏で推移しています。

そのため、賃貸物件ローン・住宅ローン金利は、依然史上最低水準の低さですが、とはいえ数か月前に比べて最近は僅かに上昇しています。
今後の予測ですが、国債専門のエコノミストの見解では多くの方が、2020年の国債の金利は高くても0.05%としています。
日銀は、コロナショック後の経済立て直しに向けて、株式(ETFやREIT)の買い入れにより下支えを行うことと、さらなる金融緩和政策を行うと発表しています。
こうした日銀の金融政策を考えると、この先のローン金利の大きな上昇はないと思われます。

国債金利の上昇可能性は以下のような要因が考えられます。まず、可能性があるのは米国など主要国の金利上昇です。
今、米国債の金利も低くなっています。次に、国内景気の大幅回復ですが、今年度中は、それほど大きな期待はできません。
最後に、先に述べた日銀のオペレーションです。こうしてみると、しばらくローン金利が大きく上昇する可能性は、ほぼないと言っていいでしょう。

建築費とストック数の今後

次に建築費ですが、まだコロナウイルスによる影響による変化の具体的な数字は公表されていませんが、ヒアリングベースでは概ね横ばい~やや下げ基調にあるようです。
建築費が下がると、新築販売価格が下がる可能性がありますので、不動産市況においては上昇圧力になります。

また、ストック数ですが、これはコロナウイルスにより数か月、実質的にストップしていましたので、一時的ですが、増加がとまりました。
そのため、年単位でみると今年は減少の可能性が高そうです。ストック数の減少は、賃料に影響を与えます。
ストック数が増えない状況で、需要が横ばいだとすれば、賃料上昇可能性が高くなります。

ムードは読めないがいい物件に巡り合う可能性が高まる

最後に間接的な要因のムードですが、こればかりは読めません。
ある方が投資用マンションを購入しようとしていると、周辺の方が「こんなご時世に、マンションを購入して大丈夫か」と横やりを入れる可能性があります。

「こんなご時世だから、いまが買い時だ」とは明確には言えませんが、しかし、こうした停滞ムードの時には、多くの方が購入に躊躇していることが多く、「これだ!」と思えるような物件に出会う可能性が高くなります。
そう思えるような物件に巡り合えば、本稿でこれまで述べたように、ワンルームマンションの購入時期としては、悪くないと思います。

不動産エコノミスト
一般社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産エコノミスト 吉崎 誠二

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学博士前期課程修了。 (株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て 現職. 不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。