不動産エコノミストが語る 不動産投資の必須思考

ほとんど伸びていない空き家率。5年ぶりに更新された空き家率データを読み解く

【目次】

―予想を大きく下回った空き家率13.55%
―空き家問題は解消に向かっている?
―空き家対策が徐々に効果をみせている

予想を大きく下回った空き家率13.55%

4月26日に、総務省から「住宅・土地統計調査」(速報値)が発表されました。
この調査は5年に1度実施されるもので、今回は2018年10月時点の調査結果(速報値)の発表です。
速報値と最終確定値がズレることもありますが、今回はこの速報値をもとに空き家数の分析を行ってみましょう。

まずは、実数を抑えておきます。住宅総数は6242万戸、空き家数は846万戸、空き家率は13.55%となりました。
詳細に見ると、空き家846万戸のうち、いわゆる空き家問題とされている使われていない住宅等は347万戸でした。
その他では、賃貸用が431万戸、売却用(まだ売れていない、これから売る)は29万戸、そして別荘などの「二次的住宅」は38万戸でした。

空き家問題は解消に向かっている?

前回と比較すると、空き家の現状が見えてきます。
前回の5年前(2013年)の調査の時は、住宅総数6062万戸、空き家数820万戸、空き家率は13.53%でした。比較すると、下の表のようになります。

空き家関連データ分析
2013年結果 2018年速報値 伸び率 2018年の予測 予想との差
総数(万戸) 6,062 6,242 103.0 6,372 -130
空き家数(万戸) 820 846 103.2 1,083 -237
空き家率 13.53% 13.55% 17.00%
(野村総研予測)

加えて、野村総研が2015年に予測公表し、多くのメディアが取り上げた数字も掲載しておきます。
住宅総数は、プラス180万戸(3%増)の増加となりました。野村総研の予想6372万戸を大きく下回る結果となりました。
新築住宅の増加が予想よりも、大幅に少なかったことになります。地価上昇、住宅価格上昇が予想以上に進み、建築数がおさえられたことが考えられます。
また、空き家数はプラス26万戸(3.2%増)となりました。予想では、263万戸の増加となっていましたので、空き家の増加は、予想の1/10だったことになります。

その結果、空き家率は、0.02%増と、ほぼ横ばいという結果的になりました。
2008年の空き家率が13.14% でしたので2008年から2018年までの10年間で空き家率は0.4%程度しか増えておらず、確かに空き家数は僅かには増えていますが、空き家率はこの10年ほぼ横ばいと言えます。

空き家率が大きく増えるという予想は、仕方ないものでした。
日本において住宅が最も多く建てられたのは1970年代~80年代の頃で、この頃に建てられた住宅が2018年には築40~50年を迎えます。
住宅を建てて(あるいは購入して)40~50年も経つと、住む方々の状況に変化が訪れます。
相続、売却、建て替え、リノベーション・・・こうした新たな需要対象にならなかったものが空き家になります。
多く建てられた時代の物件が変化期を迎える今、またはこれから空き家になる可能性物件は増えてきます。
このような状況を放っておくと空き家数が増えることは間違いないと思います。

空き家対策が徐々に効果を見せている

しかし、空き家率は、この5年間でほぼ横ばいでした。建築数もあまり増えていません、なによりも空き家数の増加は予想の1/10程度でした。
多くの自治体は、空き家対策を行う補助金を出しています。この制度を利用する方も徐々に増えているようです。
さらに、都市部では再開発が進み、使わなくなった古い住宅等を購入して一体開発が行われて街の再生が進んでいます。

ある全国紙は、今回の発表においてもいつものように「空き家率が上昇。人口減少下にも関わらず、住宅が建てられ過ぎている」と書いていました。
この報道と現実は大きくかけ離れているようです。しっかりと情報を入手して、適切な判断を行うべきでしょう。

不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産エコノミスト 吉崎 誠二

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学博士前期課程修了。 (株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て 現職. 不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。

PAGE TOPPAGE TOP