不動産エコノミストが語る 不動産投資の必須思考

消費税増税は、ワンルームマンション投資にどんな影響があるのか

【目次】

―消費税の原則
―新築マンションにかかる消費財について
―中古マンション取引にかかる消費税について
―不動産関連取引で消費税のかからないもの

2度の延期を経て、いまのままで進むと、2019年10月から消費税が10%に増税されます。
「リーマンショック級の大きな経済ショック」があれば再度延期の可能性がある、と含みを持たせているような状況ですが、予定通り10%へ増税ではないかというのが大方の見方です。

では、ワンルームマンション投資において、消費税増税はどんな影響があるのでしょうか?
その理解のためには、ワンルームマンション投資を行う際に、どんな項目に消費税がかかり、どんな項目に消費税はかからないのか、について知る必要があります。

消費税の原則

まず、消費税の原則です。
「消費税は、商品購入やサービスの提供を受けたとき等の消費行為に対して課税される。」
また、「国内で、事業者が行う取引にたいしてかかる」税ですから、海外での購入、あるいは事業を行っていない個人からの購入には消費税はかかりません。
また、「消費税課税にそぐわないもの」 と「社会的な配慮としてかからないもの」があります。これらはのちほど、解説します。

新築マンション購入時に掛かる消費税について

はじめに、新築ワンルームマンション投資において、消費税がかかるものを挙げます。

ワンルームマンションもファミリー向けマンションも、購入するものは、「区分所有権」です。この区分所有権は、持ち分割合に応じた土地と建物部分(細かく記載すると、専有部の専有使用権、共有部の共同利用権)に分かれています。
土地は、使っても消費税されないものですから、消費税はかかりません。
そのため、新築分譲マンション(ワンルーム、ファミリー向け問わず)を購入する際には、本体価格のうち建物相当部分の金額にだけかかります。
それ以外にも、必ずかかるものとしては、住宅宅ローン等の事務手数料、司法書士などへの報酬 などには消費税がかかります。

中古マンション購入時の消費税について

消費税は事業者が納める税ですので、売主が個人の場合にはかかりません。

先ほど、「マンション、一戸建ての売買において、土地部分は非課税、建物部分は課税対象」と述べましたが、例えば、個人が所有する中古物件を買う場合、建物部分についても非課税です。
一方、業者が所有している中古物件の場合は、当然建物部分には消費税がかかります。
新築マンションなどは、ほぼすべてデベロッパーが販売しますので、消費税がかかってくるわけです。
中古ワンルームマンションの場合、仲介業者が間に入って、個人間売買を繋ぐパターンと、中古物件を一度業者が買い取って、それを個人に再販するパターンがありますので、注意が必要です。
ルールは同じです。また、仲介業者に支払う仲介手数料(売買・賃貸借とも)には消費税が必ずかかります。

不動産関連取引で消費税がかからないもの

最後に、マンションの購入において消費税がかからないもの(一部)を挙げます。

1) 土地の購入代金
先ほど述べたように、土地は使っても減らないので、「消費」に当たらないということで、「消費」税対象外です。
また、土地には、土地の上に存する権利も含まれます。土地の上に存する権利とは、地上権、土地の賃借権、地役権、永小作権などの土地の使用収益に関する権利のことをいいます。

2) 住宅ローンの返済利息
ローンの利息や預貯金の金利にはかかりません。国税庁ホームページには、「消費税は、財貨やサービスの流れを通して消費に負担を求める税です。
したがって、消費税の課税の対象になじまない資金の流れに関する取引などは非課税とされています。」と記載されています。

3) 住宅ローンの保証料

4) 火災保険料

5)保証金・敷金
国税庁ホームページによると、「事業用の建物の賃貸借契約の締結や更新に伴う保証金、権利金、敷金又は更新料などのうち、返還しないものは、権利の設定の対価となりますので、資産の譲渡等の対価として課税の対象となり、契約の終了により返還される保証金や敷金などは、資産の譲渡等の対価に該当しないので、課税の対象にはなりません。」とのことです。
以上は、「消費税になじまない」という理由で消費税がかからないとされています。

さらに、

6)居住用の家賃

7)地代(借地など)

これらは、「社会政策的配慮」として消費税がかからないとされています。
本来、消費税課税対象に該当するのですが、多くの人から反対されそうなので、政府が非課税にしているということのようです。
ちなみに、事務所用の賃貸(例えば、オフィスビル)や商業施設の賃料などには、消費税がしっかりとかかります。


こうして分類すると、やはり消費税がかかるものが多いようです。マンション等不動産の購入、建物の建築は大きな金額ですので、消費税増税の影響は大きいです。

9月までに購入するのと10月までに購入するのでは、建物1,500万円の場合30万円の違いになります。
さらに、もしローンを組んで購入するのであれば、30万円の買値のアップは月の返済額で約1000円のアップになります。
もしワンルームマンション投資を前向きに検討しているのであれば、9月までに決断するだけで今後の運用に大きな影響が出てきますので、慎重に検討するのはもちろん、早目の決断が大切になってくることは言うまでもありません。

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不動産エコノミスト
一般社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産エコノミスト 吉崎 誠二

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学博士前期課程修了。 (株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て 現職. 不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。