不動産エコノミストが語る 不動産投資の必須思考

22年度 最新路線価を分析

目次

―  路線価とは
― 22年度路線価の全国俯瞰
― 東京都の路線価の状況
― 23年への展望

2022年も半分が過ぎ後半に入りました。毎年後半スタートの7月1日には路線価が国税庁より発表されます。
路線価は、区分マンションを所有すれば、毎年納める固定資産税の算定基準となるものです。

2022年の路線価は、全国平均は前年比0・5%増となり、2年ぶりの上昇となりました。
新型コロナウイルスの影響が徐々に減り、経済活発化の兆しや人流の増加が見られ始めている地域が増えました。
そのため、22年度路線価観光地や繁華街などでプラスに転じたり、下げ幅縮小したりなど、回復のキザシが鮮明となってきました。

ただ、訪日客の急増などを背景に5年連続上昇となった20年(注:20年の路線価は、価格時点1月1日、公表7月1日です。そのため新型コロナウイルスの影響がない価格となっています。)のコロナ前の水準には戻ってはいません。
今回は、発表されたばかりの22年度路線価について解説します。

路線価とは

路線価は、国税庁が発表する不動産が関わる税、例えば相続税や贈与税や固定資産税の課税基準を算出する際の基準となる土地価格です。
今回7月発表の路線価は、2022年1月1日以降に発生した相続や贈与において、相続税額や贈与税額算定のもとになる価格となります。
路線価は、特定条件や奥行距離等による補正、その他その計算方式はかなり複雑ですので、詳細な税額については専門家に相談するといいでしょう。

22年度路線価の全国俯瞰

22年の路線価は全国平均でプラス0.5%上昇し、全国20都道府県で平均値が上昇しました。
東京・大阪・愛知の3大都市いずれも昨年のマイナスからプラスに転じました。
都道府県別に見れば、前年対比上昇率の上位は、1位北海道、2位福岡、3位宮城、4位沖縄、5位愛知となっています。これらの道県では、主要都市(あるいは主要駅)での駅前再開発が進み、人口・世帯数とも大きく増加しています。

東京都の路線価の状況

東京都の路線価は平均で前年比1.1%上昇しました。昨年は8年ぶりの下落でしたが、1年で再び上昇基調に戻りました。
今年度の路線価の上昇率を丁寧にみると、大きな傾向に気が付きます。それは、上昇率上位に住宅地に隣接する駅前周辺地が目立ったことです。
逆にオフィスエリアや繁華街では回復の遅れが目立ち、下落率の上位には、上野や池袋といった都心繁華街、商業地が並んでいます。
また、八重洲・丸の内といったオフィスエリアの路線価も回復はまだ先のようです。

今年の東京都の路線価の傾向を見ると、
① インバウンド観光需要、国内観光需要が戻りつつあり、昨年分は大きく下落したが、多少回復のキザシが見え始めている。
② リモートワークが定着し、地域に根差した商店街やショッピングセンターなどは好調が続き、都市部の中にあって地元感のある地域が伸びている
③ オフィス需要は厳しい状況が続いており、広く一般化したリモートワークはもとには戻らないと思われる。
 この状況に今後の都心での新規供給が増えることを勘案すれば、オフィスエリアの苦戦は続く。

23年への見通し

大都市部、特に首都圏での傾向として、住高商低 が見られます。
都心においても居住エリア(住宅地)の上昇は鮮明で、一方オフィスエリアの回復は未だ道半ばという状況です。
とくに、上記③で書いたように、23~25年は新規竣工ビルが増え供給が一気に増えるので需要の急回復がない限り賃料下落は避けられず、そうすればオフィスエリアの地価は下落可能性が高まります。

また、上記②で書いたように、「都心ど真ん中」というエリアの地価は依然高い状況は続くと思われます。
加えて、リモートワークが普遍的に続くとするならば、「都心部の中の地元感のある地域」の住まい(ワンルームマンション含む)の人気は、さらに高くなり、それに伴い、こうした地域の地価が上昇する可能性は高いでしょう。

不動産エコノミスト
一般社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産エコノミスト 吉崎 誠二

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学博士前期課程修了。 (株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て 現職. 不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。