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「投資物件としてのタワーマンションは大丈夫か?」

 タワーマンション人気は高まるばかりです。最近では、タワーマンションに住む主人公のテレビドラマが放映されて、「憧れのタワーマンションでの住まい」として描かれていました。また、広い一戸建てに住む友人が、「息子(大学生)が、一戸建てよりもタワーマンションに住みたいって言うんだよ。かつては、一戸建てに住むことが夢のマイホームって言われていたのに、今の若者は戸建てよりタワーマンションの方が憧れなんだよな‥」とぼやいていました。
数年前から、タワーマンション上層階の取引価格と固定資産税評価額との差を利用した節税方法がもてはやされていました。しかし、こうした抜け穴のような方法が問題となり、タワーマンション上層階の固定資産税見直しが行われることになりました。今後はこうしたメリットが減ることになります。
(タワーマンションに関する税金については安易に考えず、税理士にお問合せください)

 タワーマンションの定義は、はっきりと決まっているわけではありませんが、概ね21階建て以上のマンションをその外観からタワーマンションというようです。(諸説あります)
 1980年代後半くらいから、超高層マンション=タワーマンションがぽつぽつと建てられ始められましたが、1998年に建てられたエルザタワー55が55階立ての超高層マンションとして販売され、それを契機として、さらにはちょうど都心回帰の気運もあり、それ以降、2000年代になって次第にタワーマンションが増えていきました。いまでは、都心をはじめ多くの大都市に建つタワーマンションですが、その歴史は、まだ20年弱といっていい状況です。

 タワーマンションに住むメリットはいくつかあります。中~上層階においては、景色の素晴らしさがあげられます。しかし、住んでいる方々の感想では、確かに晴れた日の朝の爽快感や夜景に感動することはありますが、「しばらくすると、日常の景色となり、それが普通の情景」となります。
他のメリットとしては、
・タワーマンションはたいてい交通利便性がいいところに建っていることが多い。
・1棟当たりの戸数が多いため、相対的に管理費が安い
・共有スペースが充実している
・コンシェルジュなど、大規模マンションならではのサービスが充実している
 などを、あげる住人が多いようです。
 
一方、タワーマンションでは、充実した共有部の設備のためそのメンテナンスにかかる費用が必要、高層建築のため外部清掃や修繕の費用が割高など、管理費が安い反面、修繕費が意外に高いというデメリットを指摘する声もあるようです。もちろん、管理組合は、修繕積立金を所有者から徴収していますが、この先どれくらいかかるかの見通しが不透明で、いくらかかるか分からないと不安視する組合もあると聞きます。まだ20年弱という歴史の浅さが不安をあおっているのかもしれません。
 マンションの大がかりな修繕は早ければ10年を超えたころから(一般的には築後15年くらい)、第1回目の大規模修繕が行われます。近年増えているタワーマンションは、昔に建てられたマンションとは異なり、耐久性の高い設計となっているようです。そのため、一般的には50年と言われているマンションの寿命よりも長くなる可能性が高くなり、築後60年、70年と利用できるかもしれない。そうすると、大規模修繕は4~6回程度は必要になってきます。結構なお金がかかりそうだけど、修繕積立金は足りるのか?という不安がよぎります。
 また、修繕に際し高度な工法を使うことになるので、こうした工事に対応する人件費の高さなどの懸念も想定されます。
私は色々なメディアで、乱立するタワーマンションについて、将来の価格に懸念を抱いていることを書いてきました。タワーマンションが乱立するエリアの50年後は、1970年代80年代に多く造られた郊外ニュータウン(現状、高齢者が多く住む街)になってしまっているように思えます。こうしたことを考えると、タワーマンションも先を観て選んで買う時期に来ているといえるでしょう。
 
 投資用としてのタワーマンションはどうでしょうか。
タワーマンションを投資用に買う方は多くいらっしゃいます。一般的な投資用マンションに比べて値段が高いことが多く、利回り的にマイナスな反面、人気がありますので入居者客付けは、楽なのかもしれません。
 しかし、先に述べたように、修繕の問題、大規模改修のための修繕積立金の割り増しなど、想定外の出費がありえます。不動産投資においては、いかに「想定外の支出」を減らすかが求められます。こうしたことを考慮して、タワーマンションを投資物件として検討するのは、慎重な姿勢で臨む方がいいと思われます。

不動産エコノミスト
一般社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産エコノミスト 吉崎 誠二

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学博士前期課程修了。 (株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て 現職. 不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。