不動産エコノミストが語る 不動産投資の必須思考

空室率を勘案した利回りでの判断のススメ~単純な利回り数字で、投資判断することが危険な理由

今回は、不動産投資の利回りについて、ワンルームマンションを事例にあげながら注意点について解説します。高利回り物件だと思って飛びついたら空室が続出して、想定利回りを大きく下回った!という例も多く聞かれます。利回りが何%かは、物件購入の大きな決め手になりますが、数字が高い低いというだけで判断するという単純な事ではありません。順を追って説明します。

利回りの計算方法

一般的に不動産投資の利回りは、おおまかに2つの計算方法があります。
まず、「表面利回り」 という比較的単純な計算方法です。

家賃収入×12か月 ÷不動産購入価格 で計算します。

この時、不動産購入価格に、不動産の価格だけで計算する方法と、諸経費まで含めるか、で異なりますが、一般的に表面利回りという単純な指針では不動産価格だけという場合が多いようです。

次に、NOI利回り」という計算方法です。NOINET OPERATING INCOMEの頭文字を取ったもので、家賃収入から管理費用等の諸経費を引いたもの(それぞれ、年間)÷不動産価格 で計算されます。

ワンルームマンション投資においての管理諸経費は主に、マンション管理費、修繕積立金に加えて、PM費用(入居者管理費用)などです。これら3つの合計金額は物件によりけりですが、だいたい1万円~15000円程度です。

家賃10万円の物件で、不動産価格3000万円、管理諸費用1.5万円とすると、

表面利回り=10×12÷3000=4.0%

NOI利回り=(10‐1.5)×12÷3000=3.4% となります。

空室率を勘案する利回り計算

ワンルームマンションはエリア、立地により空室率は大きく異なります。ここに空室率を加えて計算してみるとだいぶ違いが出ます。
以下、単純化のため表面利回りで計算してます。

A)都心一等地物件 家賃10万円、価格3000万円 表面利回り=4%

この場合立地が良いことから空室率は、かなり低くなります。
しかし、34年に一度は入居者入れ替わりのため仕方なく1か月程度の空きが出ます。この場合の空室率は、

空室率=1か月/36か月 =約2.77%、つまり97.23%の入居確率です。

空室率勘案した表面利回り=10×12×97.23%÷3000=約3.89

B) 郊外で駅から距離のある物件 家賃5万円 1200万円 表面利回り=5.45%

空室率は都心一等地に比べ、ずいぶんあがります。入居者が退去した後、すぐに次の入居者が付かない場合など想定されますので、3年で1年空いたとします。

空室率=12か月/36か月=33.33% 、つまり入居確率66.67%です

空室率勘案上の表面利回り=5×12×66.67%÷1200=約3.33

この想定では、空室率勘案上の利回りは逆転します。

空室の想定は、容易ではありませんが、もし家賃を変えずに募集を続ければ、上の想定のような事例は大いにあり得ることです。空室を無くすためには、敷金礼金などの募集条件を緩和したり、家賃を下げるなどの施策が必要になり、結果利回りが下がることになります。

家賃下落率も勘案したい

また、ここでは詳細なシミュレーションは行いませんが、家賃下落率勘案の利回り計算もシミュレーションしてもいいでしょう。すでにべましたが、仮に空室が続くようならば、募集条件を緩和したり、家賃を下げたりして空室を埋めることになります。いうまでもないことですが、空室ほとんどない都心一等地物件は経年に伴う家賃下落率は圧倒的に低くなります。

このように考えると、購入時の利回りだけを見て、「利回りのいい物件」を選ぶというリスクがよくわかると思います。

 

不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産エコノミスト 吉崎 誠二

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学博士前期課程修了。 (株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て 現職. 不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。

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