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平成30年の税制改正:「給与所得控除」の減額

Ⅰ、平成30年の税制改正の目的

高所得サラリーマンに対する増税が続いています。一方、高所得の自営業者に対しては、交際費の経費計上枠を拡大し、減税政策となっています。今回の増税対象となる850万円以上のサラリーマンは、全体の約7%程度ですので、大多数の人には影響のない改正というのが真実です。今回の改正は、増収目的ではないとされていますが、。現実には、税収は900億円程度増える予定です。
働き方の多様化によりフリーで働いている人が増えています。彼らは自営業者となります。例えば、自宅でのネット関連の仕事をしながら、空き時間に複数のアルバイトをしている場合が多いようです。彼らが受け取る報酬は、支払い会社により源泉徴収されています。確定申告する場合、実際に負担した必要経費しか認められません。給与所得ではないので給与所得控除の対象にならないのです。この不公平をなくす為に今回の改正は行われるとされています。

Ⅱ、給与所得控除の要点と自営業者との政策比較

1、 平成30年改正予定:高額給与所得者を狙い撃ち

(ア) サラリーマンの経費ともいえる給与所得控除が縮小されます。→850万円以上の給与所得者にとって増税となります。
(イ) 基礎控除が38万円から48万円に拡大されます。→所得に無関係ですべての納税者に対して一律減税になります。但し、所得2,400万円以上の基礎控除は段階的に縮小され2,500万円超でなくなります。

2、 平成26年改正:自営業者は交際費の損益損金算入限度を拡大し優遇

(ア) 平成26年の改正で、交際費の損益損金不算入の限度が縮小され、交際費を多く認められるようになり、事実上の減税が行われました。
(イ) 一方、サラリーマンの給与所得控除は、平成25年、28年、29年と徐々に減額され高所得のサラリーマンは増税されています。

Ⅲ、給与所得控除の推移

給与所得控除とは、サラリーマン等の給与所得者を対象に、収入から「一定の金額」を必要経費として認めて控除し、課税所得の計算をする制度です。つまり、「収入-給与所得控除=所得」となり、この所得に対して税金がかかります。自動的に所得が決まるので、会社が本人に代わって納税手続きをすべて済ませしてくれます。

今度の改正では、「一定の金額」を決める計算式が変更になるのです。納税の源泉徴収制度は、納税の手続きは会社が行うので、領収書の整理や税理士への納税額の計算等の事務作業が不要になり、とても便利な制度です。しかし、給与所得控除の金額は、個別事情はほとんど認められずに、一律会社が支払う給与金額から計算されます。

この給与所得控除の変化を次に示します。特に、低所得者層に大きな変化はなく、影響が大きい高所得者のみを記載します。平成24年度までは収入に上限がなく控除額「収入金額×95%-1,700,000円」が控除額でした。平成25年度からは収入1,500万円以上に245万円の控除額上限が設定されました。平成28年からはさらに収入1,200万円以上に230万円の上限、平成29年からは収入1,000万円以上に対し220万円の上限が設定されました。必要経費の金額を減らすことにより、課税金額が増えることになります。所得1,000万円の所得税率は平成19年以降変化がないので(但し、平成27年に所得1,800万円超に税率45%が新設)、給与所得控除を減らすことによりその対象となる高額所得者は増税されていることになります。

一方、自営業者は、必要経費の領収書が必要になりますが、交際費を上限800万円まで認めています。そして、平成26年改正では社内飲食費(会議費は1人5,000円以下については従来から認めている)を除いた交際費に含まれる飲食費に対して、接待飲食費として、その金額の50%を損金算入できることになりました。こちらは、条件は付きますが経費を多く認める改正が行われているのです。

給与所得控除の推移

年度:高額所得者部分を抜粋 給与等の収入金額
(源泉徴収票の支払金額)
給与所得の金額
平成24年以前 10,000,000円以上 収入金額×95%-1,700,000円
(上限泣く上記の比率)
平成25年から27年 10,000,000円以上
15,000,000円未満
収入金額×95%-1,700,000円
平成25年から27年 15,000,000円以上 収入金額-2,450,000円(上限)
平成28年 10,000,000円以上
12,000,000円未満
収入金額×95%-1,700,000円
平成28年 12,000,000円以上 収入金額-2,300,000円(上限)
平成29年 10,000,000円以上 収入金額-2,200,000円(上限)
平成30年(予定) 8,500,000円以上 平成29年度から一律△100,000円

Ⅳ、給与所得控除の国際比較

給与所得控除は、世界と比較した場合にはどのような水準にあるのでしょうか。

主要国のイギリス、ドイツ、フランス、アメリカと比較した場合、給与所得者に対する給与所得控除は日本が最も高いです。
日本の給与控除額は上限に達するまでは収入金額に応じて決定されます。イギリスには給与所得控除の制度がありません。交通費等は実額が控除できます。
ドイツ(約12万円)とアメリカ(約65万円)は収入金額に関係なく定額です。フランスは日本に似た制度となっていますが、収入1,000万円の場合、上限額(約145万円)と日本より低額な設定です。
但し、ドイツ・フランス・アメリカでは、概算控除制度と実額控除制度との選択制とされています。つまり、上記の概算控除を選択した場合実額控除は適用できません。
しかし、自営業者と同様に領収書等を整理し確定申告することができます。日本の給与所得者は、一部を除き源泉徴収制度のみです。実額控除を選択できません。国際比較を見ると、給与所得控除を利用できることは有利とも言えるのです。

税理士 齋藤聡

慶應義塾大学 経済学部(計量経済学専攻)卒業。 東京大学大学院 法学政治学研究科(民刑事法専攻)修了。 東海銀行(現三菱東京UFJ銀行)に20年間勤務、銀行で法務とベンチャー支援の知識を身に着ける。その後産業能率大学にて、法律、税法、ビジネスプラン等を教え、現在教授を務める。

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