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これから金利はあがるのか?日銀黒田総裁続投決定と2018年の金利予測

29日、「日銀黒田総裁が再任、続投」という報道が速報で流れました。

そして政府は16日、衆参両院の議院運営委員会理事会で、4月8日に任期満了となる日銀の黒田総裁を再任する人事案を提示し、また、3月19日に任期満了となる中曽宏、岩田規久男両副総裁の後任に、日銀の雨宮正佳理事と早大の若田部昌澄教授を充てる案も合わせて提示しました。
国会での衆参両本会議で承認を得れば、この人事が承認されることになります。

これで、安倍首相の経済政策「アベノミクス」を支えてきた大規模な金融緩和を維持すること、そして引き続きデフレ脱却の実現を目指すということが一段と明確になりました。

黒田総裁は20133月に総裁に就任しました。インフレ2%目標、大胆な金融緩和政策を打ち出し、企業だけでなく、広く国民に積極的な投資、積極的な消費を促しました。
就任当時の不動産市況を振り返ってみると、リーマンショック、東日本大震災などの影響で冷え込んでいた市況がようやく2012年の秋ごろから上向きになりそうな兆しが出始めた頃でした。
そんな中で金融緩和政策、低金利政策が導入されましたので、不動産投資、土地活用投資、賃貸住宅経営などを始める方々が増えました。

こうした政策導入以前も長期にわたって、金利の基準となる公定歩合は史上最低水準でしたが、さらに大胆な金融緩和政策、具体的には、日銀が国債を大量購入することで金融機関による貸出金利を下げる等といった策を行いました。

インフレ目標の2%については、消費税増税を行った2014年前後を除けば、消費者物価指数の上昇率が2%を超えることは達成していません。
しかし、金融緩和政策により、不動産市況は活況が続き、不動産価格は上昇しまた、経済状況は徐々に良くなりました。

たいていの状況下では貸出金利が低くなると、不動産市況はよくなります。また、図にあるようにTOPIXも経済の好循環の象徴として株価上昇となります。
株価の基本は、実績×期待ですので、事業収益が向上することに加えて、今後の期待値があがれば、株価は自然と上がります。

日銀の総裁は日銀法で5年任期となっています。明治期に初代総裁が就任してから130年以上経っていますが、日銀総裁が再任続投される例は極めて珍しく(過去1度のみ、ちなみに期間をあけて2度目の就任は2例あり)今回の黒田総裁の再任続投は、かなり異例と言えます。
もちろん、政府政権与党の意向が強いと思いますが、「今の好景気に水を差さない」というスタンスがはっきりと見えます。

当面は市場の動揺を抑えるため現状の大規模な金融緩和を続けると思われます。ですが、世界情勢により、こうした緩和策は変更を余儀なくされるかもしれません。

例えば、今年の1月に量的緩和を縮小させた欧州中央銀行が、来年にもしも利上げに傾くとすると、すでに利上げを数回にわたり行っている米連邦準備制度理事会(FRB)と足並みがそろうことになります。その時に日本経済が現在のような好調が続いていたとすれば、日銀もまず金融緩和を縮小させ、その後、利上げを検討という金融正常化のシナリオが動き出すかもしれません。

しかし、少なくとも今年の秋ごろまでは現在のような大胆な金融緩和策を続けるのではないかというのが大方の見方です。

不動産投資、賃貸住宅投資において気になる金利。「もうそろそろ、金利が上がりそう」と心配する方もおられるかもしれませんが、こうした現状から判断するともうしばらく先かもしれません。

不動産エコノミスト
一般社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産エコノミスト 吉崎 誠二

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学博士前期課程修了。 (株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て 現職. 不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。