不動産投資の税金と節税

投資用マンションは税金知識がカギ!損益通算で所得税還付を受けるコツとは

不動産への投資を考えている人や既に始めている人に簡単な税金の話をしていきたいと思います。一般的なサラリーマンは、税金の納付について考える必要は全くありません。なぜなら銀行口座に給料が振り込まれるときには、既に税金が引かれているからです。給料を支払う会社は、従業員に代わって納税額を計算し、天引きし、納税します。会社が納税義務を負っており、これを源泉徴収制度といいます。しかし、投資用マンションを購入し、給与所得以外の不動産所得が発生すると、自らの所得を税務署に申告しなければなりません。これが確定申告です。そこで、税金の基礎知識を知っておきましょう。

所得税法では、その性格によって所得を10種類に区分しています。この中で源泉徴収がされない所得があり、複数の所得区分からの所得が発生すると確定申告が必要になります。また、事業所得、給与所得、譲渡所得、山林所得は一定の条件の中で損益通算を認めています。この損益通算がマンションの投資では重要です。例えば、投資用マンションをローンを利用して購入すると、支払金利が経費として認められます。確定申告の際には、その支払金利と合わせて建物の減価償却費や管理費、固定資産税など、家賃収入を得る為に要した経費を収入から差し引くことができ、その結果、経費が収入を上回るとマイナスの不動産所得が発生します。この、マイナスの不動産所得をプラスの給与所得から控除することで、所得税の還付を受けることが出来ます(所得が下がるため、翌年の住民税も軽減されます。)。なかでも建物の減価償却費は、実際にお金が出ていくわけではない費用です。(減価償却費については「不動産経営の3大経費は – 減価償却」を参照してください)毎月の返済を家賃収入で賄えるようにローンを組めば、還付された所得税や住民税が軽減されて浮いた給与の手取り分は、使えるお金となるのです。

「10の所得区分」

1.「利子所得」

預貯金や公社債の利子といった収益の分配に係る所得をいいます。

2.「配当所得」

株主や出資者が法人から受ける配当や、投資信託の収益の分配などに係る所得をいいます。
この利子所得と配当所得は、ほとんどの人は税金のことを考える必要はありません。配当所得の一部を除いて経費を認めていないので、金利や配当を支払う金融機関や会社が源泉徴収しているからです。

3.「不動産所得」

土地や建物などの不動産、借地権など不動産の上に存する権利による所得をいいます。投資用マンションからの所得は、この不動産所得に該当します。投資用マンションを購入し家賃収入等を得ると、この不動産所得が発生します。4.の事業所得と分離されている理由は、経費を不動産関連費用に限っているからです。

4.「事業所得」

農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生ずる所得をいいます。生活費以外の費用のかなりの部分を経費として認めています。

5.「給与所得」

勤務先から受ける給料、賞与などの所得をいいます。給与所得は、経費を認めていない代わりに、給与所得控除があります。

6.「退職所得」

退職により勤務先から受ける退職手当や、厚生年金保険法に基づき加入員の退職に基因して支払われる一時金などの所得をいいます。40万円×勤続年数を控除して、さらにその半分にしか課税されないので、税金が低く抑えられます。

7.「山林所得」

山林を伐採して譲渡し、立木のままで譲渡することによって生ずる所得をいいます。木の成長には長期間かかるので、税金が低く抑えられています。ただし、山林を取得してから5年以内に伐採又は譲渡した場合には、山林所得ではなく、事業所得又は雑所得になります。

8.「譲渡所得」

土地、建物、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得、建物などの所有を目的とする地上権などの設定による所得で一定のものをいいます。譲渡所得は、投資用マンションを売却したときに発生する所得になります。仮に投資用マンションで売却損が出た場合、他の不動産の譲渡所得とのみ損益通算できます。ゴルフ会員権や株式等の譲渡所得とは損益通算できません。損益通算は、不動産、株式等の同じ種類の譲渡所得のみできるものです。また、給与所得とも損益通算できません。譲渡所得に関する経費は、譲渡に直接かかわるものに限られます。

9.「一時所得」

上記から8.までのいずれの所得にも該当しないもので、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外のものであって、労務その他の役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。例えば次に掲げるようなものに係る所得が該当します。懸賞や福引の賞金品、競馬や競輪の払戻金、生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金等です。

10.「雑所得」

上記から9.までの所得のいずれにも該当しない所得をいいます。公的年金等や著述家・作家以外の人が受ける原稿料や印税などです。マイナスになることは通常なく、他の所得との損益通算は認められていません。

まとめると、投資用マンションを購入し、家賃収入を得ると、不動産所得が発生するので確定申告が必要になります。不動産所得がマイナスとなった時、そのマイナス分を給与所得と損益通算することで、所得税は還付、住民税は軽減されます。個人事業主で事業所得がある方は、その事業所得と損益通算できます。株式の譲渡所得、懸賞金等の一時所得、原稿料、講演料、公的年金等の雑所得とは損益通算できません。

また、不動産所得の経費計上は、不動産所得の獲得に必要なものに限られます。通常の生活に必要な生活費は、領収書があっても経費計上できません。

細かい説明を省くと、給与所得がある人は投資用マンションの購入によりマイナスの不動産所得が発生した場合に、給与から源泉徴収された所得税の還付を受けることが可能です。特に投資用マンションの場合、経費の大半が実費を伴わない減価償却費なので、実際にはローンの支払いを家賃収入で賄い、所得税等の還付金などを使えるお金として残せます。そうすることで、自分の税金を自分の資産形成に充てることができるのです。

税理士 齋藤聡

慶應義塾大学 経済学部(計量経済学専攻)卒業。 東京大学大学院 法学政治学研究科(民刑事法専攻)修了。 東海銀行(現三菱東京UFJ銀行)に20年間勤務、銀行で法務とベンチャー支援の知識を身に着ける。その後産業能率大学にて、法律、税法、ビジネスプラン等を教え、現在教授を務める。