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「昭和の良き古き時代の遺産~同潤会」の魅力

表参道のランドマークタワーとなる「表参道ヒルズ」。かつて、その地には日本ではまだ珍しかった鉄筋コンクリート造の集合住宅アパートとなる「同潤会青山アパート」が建っていました。解体された今もなお、良さを継承していこうと「表参道ヒルズ」の敷地に復元した「同潤館」が建てられています。今回は近代集合住宅の先駆けとなった同潤会アパートの歴史と魅力をお伝えします。

関東大震災後の復興を目的に

同潤会のアパートは、新しい生活様式を提示した近代集合住宅でした。建設当時は珍しい鉄筋コンクリート造の建物に狭いながらもガスや水道、水洗トイレを備えた賃貸住宅でした。建設のきっかけは関東大震災後の住宅の復興を目的としたことと言えます。

建設に関わったのは、震災後の義捐金をもとに内務省の外郭団体として設立された財団法人同潤会です。同潤会は、住宅不足を補うため震災後直ちに木造住宅の建設に着手し、その後の大正 15 年から10 年間に東京と横浜の16 箇所に耐震耐火のアパートメントを建設しました。

例えば、下町の罹災者への住宅供給を目的としたのが清砂通りアパートや柳島アパートです。一方、震災被害の少なかった山の手地域では、新たな都市生活者階層向けに新しい都市生活様式として供給された青山アパートや代官山アパートが建設されました。

そのほか、都市居住をうたった三田アパート、上野下アパート、鶯谷アパート、また、単身専用の虎ノ門アパートや大塚女子アパートのようなタイプもありました。昭和9年には当時東洋一といわれた江戸川アパートが建設され、このように場所により様々なタイプの同潤会アパートがありました。

※出典「同潤会代官山アパート」UR都市機構のホームページより

日本最初期のRC造共同住宅

同潤会アパートは、電気やガス、水洗トイレを備えた鉄筋コンクリート造のアパートです。わが国においても近代的な集合住宅のさきがけとなるものでした。

その住宅としての特徴は、次のとおりです。代官山アパートを例に紹介します。

規模:世帯向けでも30 ㎡未満(現在の1DK)
仕様:水洗トイレ(各戸)をはじめ生活用具の全てを完備
建物:地震に安全な鉄筋コンクリート造
防火:不燃質の障壁を設け、出入口は防火壁
防犯:建具を堅固にする
その他設備:
・和洋の様式を自由に選択可能、水道・電気・ガスの完備、キッチン設置
・屋上に洗濯室と物干しを設置

※出典「同潤会代官山アパート」UR都市機構のホームページより

最先端技術と住民のコミュニティの融合

同潤会アパートの特徴は、前述のように各戸に水道・電気・ガスの完備など最新の設備を導入していましたが、そのほかに共同浴場や集会室などの共有スペースの設置もされ、住民同士のコミュニティづくりにも積極的に取り組み、工夫をこらしています。

同潤会アパートの事例紹介

そんな現在のマンションの原型ともなる同潤会アパートのなかでも、現在もなお良い立地となるである場所にあった同潤会アパートを3つご紹介します。

■モダン人集うハイカラな卵色三階建て「青山アパート」

同潤会アパートのなかでも、一番有名なアパートと言えるでしょう。表参道のケヤキ並木に沿ったアイビーがつたう3階建て10棟の住棟のコンクリート造の建物でした。山の手アパートとして位置づけられ、「ハイカラな整備の卵色三階建てアパート」と宣伝されました。

また次第にファッション文化の発信地となりクリエーターが集まるようになった青山アパートはギャラリーやアパレルショップなどの商用利用も進みました。青山アパート解体後の跡地に2006年に誕生した「表参道ヒルズ」の敷地東南端に旧同潤会青山アパートを再現した建物「同潤館」が建てられました。その背景には、人々を魅了したアパートの歴史を継承していきたい貴重な遺産ということを感じます。

■円柱のピロティ、公園に囲まれた清楚な文化住宅「三田アパート」

三田アパートは、慶応大学の洋風建築の近くにスマートな文化住宅として登場した一棟建ての小さいながらもすっきりあか抜けたアパートでした。エントランスのアーチ上部に居室を施したり、表の街路部分は四階建て、裏側を三階とする街路と住棟の構成となっていました。近隣には芝公園や芝離宮恩賜庭園があり、「忠臣蔵」でなじみのある泉岳寺があります。

■真鍮とウォールナットの扉、スーツに身を包んだビジネスマンの館。「虎ノ門アパート」

虎ノ門アパートは、オフィスとアパートの複合建築物でした。都心の超一等地に食堂や浴室を備えたエリートの独身男性の城と話題になりました。ウォールナットのメインエントランスの扉や、重厚な鉄製の手摺子の螺旋階段はまさにビジネスマンのスーツが似合う重厚な空間でした。 ※出典:港区立郷土資料館「資料館だより第70号」より

※参考:ギャラリーエークワッド『シリーズ「都市に住まう」第一回 同潤会の16の試み-近代日本の新しい住まいへの模索-』2015年3月20日~5月21日展覧会図録より


同潤会アパートは社会史・文化的視点からも重要な価値を有する遺構です。その後のマンションは、同潤会アパートを参考にして成長してきました。しかし、現代のマンションには薄れている住宅間のコミュニティなど学ぶべきものがまだまだあるかもしれません。

FP事務所やさしいお金の相談室代表
(有)コスモスペース取締役社長
一般社団法人女性FP相続サポート協会理事

桑野恵子先生

マネー????エンジェル桑野恵子が、安心に暮らせるための不動産投資の魅力をお届けします。 エンジェルは投資の世界では資金を提供する富裕な個人のことです。桑野恵子は、資金援助の代わりに豊富な知識とノウハウを提供して資産を築いていくお手伝いをします。